Final-M1Φなる・えむいち。Final Emuichi

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H18.1.22.
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2006年01月22日(日)

「じんぐるべーる、じんぐるべーる、すずがーなるー♪」
 雪の降りしきる中、庭をかけまわる幼い女の子。
「西守歌、これ西守歌や」
「あっ、おじいちゃまー」
 なまえをよばれ、彼女は祖父の腕の中へ飛び込む。
「えへへ、おじいちゃま、あったかい」
「まったく、こんな寒い日だというのに、お前は元気だな。……おお、手もこんなに冷たくなって」
「だって、もうすぐクリスマスだもん。なんだかうきうきしちゃって」
「そうか、そういえばそうじゃったな。西守歌、クリスマスのプレゼントは何が良い?」
「ぷれぜんと? うーん……。あっそうだ! えっとね……」

「Φなる・えむいち。」第7話 大聖夜! 愛と祈りのジングルベル

 (今回はラムネ方式でアバンを作ってみました。HTMLの構造的には変だけど)

 先生も走る12月。街はきらびやかな電飾に包まれ、地球温暖化に一層の拍車がかかる。
「って、嫌な言い方するなよ……」
 電飾とは無縁のマンションの一室、いつものとおりの水原兄妹+一人の夕食後の団欒である。
「まあまあ。それにしても、もうすぐ今年も終わりですわね。本当にいろんなことがありましたわ」
「ああ、まったくな……」
「私が涼様という運命の人と巡り会って、まだ一年もたっていないとは信じられませんわ」
「誰が運命の人だ、誰が!」
「うふふ。……ところで西守歌ちゃん、もうすぐ冬休みだけど、実家には帰らなくていいの?」
「ああ、そうですわね明鐘様。お父様は、大晦日には帰ってきて一緒に年越しそばを食べないと承知しないなんて申しておりますけど……。まあ、適当にいなして、元日になったらお祖父様といっしょに、こちらで初詣ででもと思っておりますが」
「来んでいい、来んで!」
「まあ、とりあえずクリスマスくらいまではこちらにおりますわ」
「そうなんだ。……そういえばクリスマスかぁ。今年はどんなプレゼントがもらえるんだろ……」
「え? ああ、やっぱり毎年涼さ……もがっ!?」
 と、唐突に西守歌の口をふさぐ涼。
「ど、どうしたの、兄さん?」
「あ、あーいや明鐘、なんでもないんだ。なんでも」
 と言いつつ、西守歌の身体を拘束したまま後じさる涼。そのまま隣の西守歌の部屋まで連行する。
「はぁ、はぁ……」
「嫌ですわ涼様、まだ夜は早いというのに」
「だーっ、違う! ……いいかお前、明鐘の前で余計なことは言うなよ」
「は? 余計なこと、と申しますと?」
「だから、クリスマスプレゼントだとか、サンタクロース、だとか」
「えっと……涼様、それってつまり……」

「そ、つまり鐘ちゃんはいまだに、サンタクロースの存在を信じてるってわけ」
 翌日、学校で西守歌を前に講釈を垂れる守屋美紀。
「……なんと」
 素直に感心する陸奥笑穂。その隣で、静かに咳払いをする涼。
「まったく、あんたのブラコンぶりもあきれたものよね〜。毎年、鐘ちゃんに欲しいものをそれとな〜く聞き出してさ、イヴになったら寝静まるのを見計らっ て、そっと枕元にプレゼント置いてさ。あたしも子供のころはよく片棒かつがされたわ。まさか、まだ続いてたとは思わなかったけど」
「うるさい! 悪いか! 明鐘は俺の大切な」
「はいはい、わかってるって」
「でも素晴らしいですわ、その思いやり、人知れぬ努力、さすが涼様でございます」
「でもいいの〜、涼? 鐘ちゃんももう高一よ? そろそろクラスの誰かにでも、ホントのこと話されたりして」
「な……!?」

「兄さん!」
「おお、どうした明鐘、そんな慌てて帰ってきて」
「その……今日クラスの子から聞いたんだけど。サンタさんなんて、ホントはいないって」
「ぎくっ!!! な、何をバカな、そんなわけが……」
「兄さん! どうして目をそらすの? ちゃんと私の目を見て答えて! ねえ、ホントのこと言って、兄さん……!!」

「うおおー! どこのどいつだ、そんなこと明鐘に吹き込んだヤツはー! この俺が成敗して……」
 椅子から立ち上がり、今にも妹のいるクラスに乗り込んでいかんばかりの剣幕を見せる涼。慌てて諫める美紀たち。
「あぁ〜待って待って。単なる仮定の話だってば」
「あぁ……そうか。ふぅ……」
「しかし、守屋の言うとおり、さすがにいつまでもこのまま隠し通せるとは思えないが。妹さんにとっても、それはちょっと」
「うう……お嬢の言うことも一理ある。だが、しかし……それを俺の口から言うわけには……。ああでも、どこの馬の骨とも判らんヤツに言われるよりは、いっそのこと……」
「あんたは結婚適齢期の娘を持つ父親かっての」
「ふふふ……お困りのようですわね、涼様?」
「なんだお前、その口ぶりは。また余計なことをしようってんじゃないだろうな」
「ご心配なく。まあ、この私にお任せください。悪いようにはいたしませんわ」
「まあ涼、とりあえず話だけでも聞いてみれば?」
「う〜ん……」

 そして、舞台は雪山。
「ということで、第一回サンタさん杯争奪、走って滑って犬ぞり対決〜!」
「いえ〜い、どんどんぱふぱふ〜」
 調子を合わせる美紀。
「……やっぱやめときゃ良かった」
「そう言うな水原。……まあ、私も半分以上お前に賛成だが」

 ここで少し時間を巻き戻す。
 きゅるきゅる。
「明鐘様。実は折り入ってお話が」
「な、何、西守歌ちゃん? そんな改まって」
「これは益田家のトップシークレットなのですが……。実は先日、私ども益田グループの北欧支部が、サンタクロース協会をM&Aで買収いたしまして」
「ええっ!?」
「以前お話ししましたRTP委員会の設置理由、あれは決してお題目ではなく、お祖父様は少子化問題に真剣に取り組もうとしております。その過程で、世界中 の子供たちに夢と希望を与えるサンタクロースの理念に深く共感したのです。ですが、ここのところの世界的不況の影響で資金繰りも悪化、とてもすべての家庭 にプレゼントを贈るだけの予算は組めません。そこで、今年のクリスマスは一風変わった趣向を凝らすことに相成りました」
「変わった趣向……?」
「テーマはズバリ、奪え愛! クリスマスプレゼントを賭けた、本気の真剣勝負です」
「……えぇ!?」

 回想終了。
「ってか、なんで犬ぞりレースなんだよ!」
「それはやはり、サンタさん杯ですから、TPOにふさわしい対決方法をと思いまして」
「それだったらソリを引くのはトナカイじゃないのか?」
「それも考えましたけれど、やはり安全を最優先いたしまして」
「考えたのかよ。ってか、こういう勝負だったら、体力バカの美紀が一番有利じゃねぇか」
「ちょっとー涼! 聞こえてるわよ!! 文句あんならあんたも勝負に参加しなさいよ!」
「なにー、よーし望むところだっ……」
 と、飛び出しかけた涼を西守歌が止める。
「まあまあ落ち着いて涼様。明鐘様の勝負なのに涼様が参加してどうするんです。我々は実況席から見守るのみです」
「うう……」
「さあ、それではいよいよレースの開幕です! 犬ぞりを引くわんちゃんたちも到着したようです。それではここで選手の紹介に参りましょう! まずは1番、水原明鐘選手! ソリを引くのはエスキモー犬です!」
 ぽちっ、と西守歌はかたわらに用意されたラジカセのスイッチを入れる。
「わーわー(声援のSE)」
「あ、ど、どうもー」
「続いて2番、陸奥笑穂選手! ソリを引くのはラブラドールレトリバー!」
「わーわー、ぴゅーぴゅー」
「何故私まで……。まあ、いつものことだが」
「そして3番、守屋美紀選手! ソリを引くのはチワワです!!」
「いえーい!! ……って、どーしてあたしだけ小型犬なのよ!」
「まあ、ハンディキャップと申しますか」
「ハンデどころじゃなーい!」
「……騎手の胸の大きさに比例とか」
「ちょっとー!! 公式にはそんな設定は……」
「著者の願望ですわ」
「こーらー!」
「それでは気を取り直して、レーススタート!」
「ってもう!?」
「さあ三者一斉にスタートしました、おっと、やはり抜け出したのは1番、水原明鐘選手! これをどう見ますか、解説の水原涼さん?」
「まあエスキモー犬はもともと犬ぞり用の犬種ですからね、この勝負には適任でしょう。あとやはり騎手も優秀でしょう、犬に好かれる、まっすぐな性格をしてますよ」
「む……悪いが、勝負事には手を抜きたくない性格なんでな。それっ!」
「おおっ、2番、陸奥笑穂選手も追い上げてきた!」
「う〜む、テーマが『奪え愛』だけに、ラブラドールも強し……といったとこでしょうか」
 ひゅるる。
「……えー、折からの北風も強くなってまいりました」
「おいっ! こらっ! アナウンサーは解説者のフォローをするのが仕事だろが!!」
「さて、思った通り3番、守屋美紀選手が出遅れた形となりましたが……」
「当たり前だってのー! あーもう、自分で走った方が早いわ!」
「おおっと、守屋美紀選手、チワワを抱えて走り出した! 水原さん、これは失格では……?」
「いえいえ、ソリをひっくり返さない限り大丈夫ですからね、自分で引っぱって走ってますからOKです。というかぶっちゃけこんな勝負、なんでもありです」
「なるほど。さあ、先頭との差が縮まってまいりました!」
「ぬああ〜、負けてたまるかー」
「お、恐るべし守屋、犬相手に追いつくとは……」
「ひっ、み、みぃちゃん……!?」
「!! いかん明鐘、前を見ろ!」
「えっ?」
  明鐘の目の前に、大きなカーブが現れる。スピードを落としきれず、崖から空中に投げ出される明鐘。
「ひっ! きゃあぁー!!」
「明鐘ー!!」
 と。
 しゃん、しゃん……。
 どこからともなく響く、鈴の音。
「……ん?」
 おそるおそる目を開けた涼は、その視界に広がった光景を見て目を疑った。
 空を駆け抜けるトナカイのソリ。そこに乗ったのは赤い服のサンタクロース……いや。
 黒服集団だった。
「な……」
「あ、あれ? 私……」
 気づけば、明鐘もそのソリに乗せられている。その頭をポンと叩き、フッフッフと不気味に笑う黒服。
「あ、あの……ありがとう。サンタさん」
「おめでとうございますー! 見事サンタクロースの愛を勝ち取った水原明鐘選手、優勝決定ですー!」
「「「何ぃーーー!!?」」」
「ちょ、ちょっと待ってよ、まだレースは終わって……」
「いえいえ美紀選手、もとい美紀様。最初に申し上げたでしょう? テーマは『奪え愛』だと。レースを通じて、サンタさんの心を奪い取ることができた情熱の持ち主が、この勝負の勝者なのです」
「そんなぁ、あたしの苦労はいったい……」
「うぅむ、そういうことなら仕方ない。たしかに、サンタクロースを信じる純粋な心、その点では、水原の妹さんに勝ちを譲らざるを得まい」
「……というか、あれはサンタじゃないだろ、どう見ても」
「涼様、人を見かけで判断してはダメですわよ」
「こういうときに使う言葉じゃないだろ、それ……」

 ひとしきりの空の散策を終え、ソリは地上へと舞い降りる。瞳を輝かせた明鐘が、ソリから下りる。
「どうでもいいけど、このソリはどうやって浮いてたんだ?」
「涼様、今回ツッコミが多いですわね。某JAXAと極秘で共同開発した特殊浮遊機構を用いていますから、くれぐれもご内密に」
「そりゃ……触れたくない部分だな」
「サンタさんって、軍事機密だったんだ……」
 と、明鐘。
「ええ、ですから大人は皆、口を閉ざすのです」
「そっかー、なるほど」
「…………」
 一同、沈黙。
 というか、これでいいのか?
「さあ、改めておめでとうございます、明鐘様。お待ちかね、サンタクロースからのプレゼントですわよ」
 と、西守歌が言うのに合わせて、黒服たちがどこからともなく大きな袋を取り出す。
「ほらほら、明鐘様」
 そっと、明鐘を手招きする西守歌。それに従って、明鐘が中をのぞきこむ。
「うん。……うわぁ」
 と言って明鐘は、ちらりと涼の横顔を見る。
「……ん?」

「じんぐるべーる、じんぐるべーる……♪」
「おお、いたいた、やっぱりここか、これ西守歌」
「あ、おじいちゃま」
「ほれ、お約束通り、プレゼントだよ」
「うわーい!」
 そう言って彼女は、祖父からの贈り物を受けとる。
 それは、彼女の背丈よりも長い、大きなマフラー。
「よいしょ、よいしょ……」
 小さな手でそれを自らの首に巻いた西守歌は、それをさらに自分の祖父の首にも巻きつける。
「おお、だいじょうぶか西守歌、ひとりでできるかい?」
「うん、ちょっとまってて、おじいちゃま……できた!」
 マフラーを巻き終え、西守歌は身体を祖父にあずける。
「あったかいー。おじいちゃまもあったかい?」
「うん、あったかいよ西守歌」
「わーい! ふたりともいっしょー!」
「さ、西守歌、そろそろ部屋に入ろうか」
「うん」
 そうして肩を寄せ合い、祖父にだっこされた西守歌は、屋敷の中へと戻っていく。

「……えへへ」
 帰り道。涼と肩を寄せ合い、幸せそうな表情を浮かべる明鐘。その首に巻かれたのは、いっしょのマフラー。
 ひとつのマフラーに、涼と明鐘と。
 ……そして。
「って、長すぎるわい!」
 明鐘の反対側、涼の右隣には、西守歌が。明鐘の左横には美紀、そしてさらに笑穂が。
 五人いっしょのマフラーだった。
「あはは、いいじゃないこれはこれで。あたし的には両手に花だし」
「み、みぃちゃん……」
「守屋、その使い方は間違っているような……間違いじゃないとしたらもっと恐ろしいが」
「それにしても、こんな大勢で並んでたら歩きにくいし……おい美紀! お前足が速すぎるわい!」
「うるっさいわねー涼、あんたが昔からトロすぎるのよ」
「うふふ、みんな楽しそうで何よりですわ」
「どこがじゃ!」
「本当だね。ありがとう、西守歌ちゃん」
「あらあら明鐘様。それを言うなら、サンタさんに、ですわ」
「あれ? そうかな……。そうだね、うふふ」
「おほほ」
「えーい、俺を挟んで会話すな!」

(Merry Christmas, and Joyeux Noel...)
 ちゃっちゃらん♪

次回予告

武笠晴希「さて……今回も我々の出番がなかったわけだが」
水原涼「あのーハル兄、いきなりそんな出だしは」
芽生百合佳「まあまあハルくん、私たちはお店のほうで忙しかったし」
武笠晴希「まあな……。だというのに、バイト連中は山で遊んで……」
水原涼「あ、あのーハル?」
武笠晴希「なんだ?」
水原涼「やっぱハルは百合佳さんからプレゼントもらったんだよな? どんなの?」
武笠晴希「フッ……知りたいか?」
水原涼「うっ……ものすごーく勝ち誇った表情……やっぱいいです」
芽生百合佳「そうねー、ここで言ったら年齢制限ものになっちゃうし」
守屋美紀「えぇぇー!!」
芽生百合佳「うふ、冗談」
水原涼「読者を減らすようなこと言わんといてください……ただでさえ少なそうなのに」
芽生百合佳「反省」
武笠晴希「というか、真に反省すべきなのは……」
水原明鐘「ああっ! ハル兄さんが護身用の金属バットを!」
水原涼「しっ、西守歌! さっさと次回の予告を!」
益田西守歌「承知しました。それでは……。里帰りした私を待ち受けていたお父様の罠! 年越しそばに込められた積年の恨み! 絶体絶命の私を救ってくれたのはそう、愛しの涼様……」
水原涼「なんだかんだいって毎年紅白見ちゃうよなー。明鐘、お前の好きな歌手誰だっけ?」
水原明鐘「えっと、次に出る紅組の……」
守屋美紀「次回『Φなる・えむいち。』第8話、『大正月! 愛と迎春の謹賀新年』!!」
陸奥笑穂「……私の、出番は……」