Final-M1Φなる・えむいち。Final Emuichi

アニメ「Φなる・あぷろーち」SS
by plateau
H17.10.11.
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2005年10月11日(火)

「Φなる・えむいち。」第6話 大祝祭! 愛と永遠の幼なじみ

 秋風薫る神無月。季節は早くも冬へと移ろいはじめ、先週久しぶりに袖を通した冬服の温もりを感じながら、守屋美紀は一人、学校への道を歩いていた。と、学校近くの交差点にさしかかり、信号待ちをしている見知った顔に気づき、美紀は後ろからぽんと彼の肩をたたく。
「よっ涼。おっはよー」
「よお、美紀」
 無愛想な挨拶を返したのは、水原涼。こういう態度は、昔から変わっていない。幼なじみだからこそ許される無遠慮さというものである。
「あれ? 鐘ちゃんと西守歌ちゃんは?」
「日直」
「あっそ。ついに見捨てられたのかと思ったわ」
「バカ言うな」
「ねえ涼、ところでさ、今日、10月11日って、何の日だか知ってる?」
「今日? 日本初の鉄道事故の日だろ」
「そうそう、やっぱ日本人なら誰もが知ってる日よね……ってちっがーう! もっとほら、誰かの誕生日とかさー」
「阪口大助」
「そうそう、あたしも尊敬する声優さんの一人で……こーらー! あんた、わざとやってるでしょ!?」
「何が?」
「お前ら、朝っぱらから騒々しいな」
 と、いつのまにか横に、仲の良いクラスメイトの姿。
「あっ笑りん、おっはよー。聞いてよー、涼がさー」
「ふっ……お前ら、毎度のことながら飽きないな」
「俺はもううんざりだけどな」
「うるっさい!」
「それで? 何の話をしてたんだ」
「そうそう、それよ笑りん! きいておどろけ! 今日、10月11日はあたし、守屋美紀ちゃんの誕生日なのだー!」
「……そうか。それはおめでとう」
「えー? 笑りんまで何よその態度ー。まさか知らなかったとか言うわけ? ひどーい」
「……お前らだって私の誕生日を知らなかっただろうが」
「うっ……そ、それは……まあいいじゃん、過ぎたことは忘れようよー」
「都合のいい奴だな」
(OP略)

 で、教室。
「まあまあ、そうだったんですか、おめでとうございます。それではわたくしも、何かお祝いの品を用意しないといけませんわね」
 と、祝福の言葉を投げかけてくれるのは、涼の自称婚約者、益田西守歌。
「そんなー西守歌ちゃん、そんなのいいってー。気持ちだけで充分だよー。あたしとしては毎日、豪華重箱弁当が食べられるだけでもう満足っていうかー」
「しっかりモノを要求しとるじゃないか」
「うっさい涼。あんたこそ、長年お世話になった幼なじみに、感謝の品のひとつくらい用意できないの!?」
「世話をしたことはあっても、世話になった覚えなんてひとつもない。だいたいお前だって、俺の誕生日を祝ってくれたことなんてないだろうが」
「しょうがないじゃない。あんたの誕生日公開されてないんだから」
「は? 何言ってんだお前?」
「まあまあお二人とも。美紀様、今から黒服の方々にお電話して、お昼休みまでにいつも以上の豪華弁当をご用意させますから」
「えっホント!? さすが西守歌ちゃん、涼とは大違いだわ。ありがとー」
「……けっきょく食い気が一番かよ」

 その昼休み。中庭で、黒服たちから受け取った特製弁当を広げる西守歌。
「うわー、ホントにいつもよりすっごい豪華ー! でも西守歌ちゃん、ホントにいいの? 涼じゃなくてあたしのためにこんなこと」
「もちろんですわ。美紀様は涼様の大切なご学友、まして小さいころからの幼なじみとあれば、涼様の未来の花嫁たるわたくしにとっても家族同然。どうぞ存分にお召し上がりくださいませ」
「それじゃお言葉に甘えて、いただきまーす。……んー最高! やっぱあたし西守歌ちゃんと出逢えて良かったー。涼と結婚してからも、ちょくちょくお呼ばれしていいかな?」
「ええ、ぜひいらしてくださいませ」
「おいお前ら……。当の本人を差し置いて話を進めるな」
「あっ、いたいた。兄さーん、みぃちゃーん!」
「あっ、鐘ちゃん。やっほー」
 と、そこに遅れて水原涼の妹、明鐘がやってくる。
「うわぁ、何これ、すごーい」
「えへへ、西守歌ちゃんがね、あたしのためにって」
「あっそうだ、みぃちゃん、お誕生日おめでとう」
「ありがとー。やっぱ鐘ちゃん憶えててくれたんだー。兄貴とは大違いだわ」
「えっ? ……えっと、それでみぃちゃん、よかったら今日の放課後、プラーヴィで誕生日パーティをやるからって、ハル兄さんと百合佳さんが」
「ホント!? 嬉しいなぁ、もちろん行く行くー」
「あ、でもこんな豪華な料理は用意できないから、なんか申し訳ないけど」
「何言ってんのよー、ぜんぜんOKだってば」
「要は食べれるものならなんでもいいんだろ。幸せな奴」
「何よー涼、その言い方は」
「ふふ、まあしかし、水原の言うことも、あながち間違いではない。人は、美味いものを食べているときに、不幸に思ったりはしないものだからな」
「いやいやお嬢、そんな高尚なものじゃないから」
「本当に……いつまでもこうやって、みんなで笑いあえればいいんだがな」
「…………」
 ひゅう、と一陣、冷たい風が頬を切る。
「なーに言ってんのよ笑りん、あたしたち、いつまでだって一緒でしょ」
 と、美紀は笑って笑穂の肩をたたく。
「……ふふ、そうだったな」

 放課後。明鐘の日直の仕事が終わるのを玄関口で待ち受ける一同。
「ごめん、遅くなっちゃった」
 そう言って駆け寄ってくる明鐘に、兄が声をかける。
「学級日誌を職員室に届けるのくらい、もう一人の男子にやらせればいいのに」
「え? だって、日直って言われたからには、二人でやるものだって思ったから」
 その明鐘の言葉に、苦笑しながら涼は、
「……相変わらずマジメだな明鐘は」
「そこが、明鐘さんのいいところでもありますからね」
「そういうお前だって日直のはずだろ。仕事はどうしたんだ」
「いえ、何故かもう一人の日直の方が、自分でやるとおっしゃいまして」
「……あっそう」
「さーて、それじゃしゅっぱーつ!」
 そして、そろって喫茶プラーヴィへと向かう美紀たち。到着した先では扉を開けるなり、クラッカーの歓待を受ける。
「美紀ちゃん、お誕生日おめでとう〜」
「おめでとうございます〜」
「百合佳さん、ありがとうございますー。あやめちゃんも久しぶりー」
「いつも涼が世話になってるな。まあ、腐れ縁ほど切れにくいのはこの世の常。これからもよろしく頼む」
「あ、どうも、こちらこそ……」
「ってハル! よけいなこと言わんでいい!!」
「さ、美紀ちゃん、こっちこっち。ケーキ用意しといたよ。今日は貸し切りだから、遠慮しないで。みんなも座って座って。それじゃ明鐘ちゃん、わたしたちは食事の準備しようか」
「はい、百合佳さん」
「それじゃあ俺も……」
 と、エプロンに伸ばしかけた涼の手を、明鐘が止める。
「いいから。兄さんはみぃちゃんといっしょに座ってて」
「え? 何言ってんだよ明鐘」
「いいからいいから、ね、涼くん」
「百合佳さんまで。ってその手に持ってるカメラは何ですか!?」
「はいふたりとも、ケーキ囲んで……ラブラブ?」
「ってかけ声おかしいし! ちょっと百合佳さん!!」
「えー、涼が隣なのー? せっかくなら鐘ちゃんにしてよー」
「ご、ごめんねみぃちゃん、料理用意したらそっち行くから」
「うー、それじゃぁ笑りんでいいやっ!」
 と、反対側に座った陸奥笑穂に抱きつく美紀。
「ちょ、ちょっと待て守屋、私は水原の妹さんの替わりか?」
「え? 何、笑りん、誰かの替わりじゃイヤだって? そっかー、笑りん本気なんだー」
「って、そういうことではなくてだな……」
「うふふ。楽しそうですわね、美紀様」
「あいつは何かにつけて楽しもうとするからな。なんでもいいんだろ」
「お待たせー」
 と、百合佳と明鐘によって、つなげられた二台のテーブルに所狭しと料理が並べられる。
「わぁい、来た来たー、おいしそー」
「ってかまだ食べるのか……。昼間あんだけ食べたくせに」
「いーじゃない。せっかくあたしのために用意してくれたんだから、食べなきゃ罰当たりってものよ」
「……太るぞ」
「あんふぁねー、オトメにひょーいうこというのしふれーよ」
「口にモノ入れながらしゃべるな!」
 そんなこんなで、宴はとどこおりなく進んでゆく。

 午後7時過ぎ。すっかり日も暮れ、宴の時も終わりが近づく。
「あー、おいしかったー。今日は人生で最高の誕生日だったわー」
「ホントに完食しやがったなこいつ……。百合佳さん、勘定おねがいしまーっす」
「しめて2万58000円になります」
「えっ、うそっ!?」
「うふふ、冗談よ」
「あーびっくりしたー。でも百合佳さん、ホントに今日はありがとうございました。すっかりごちそうになっちゃって」
「いいのいいの。ハルくんも言ってたとおり、涼くんがいつもお世話になってるお礼よ。これからもよろしくね。それと、がんばってね」
「え? なにがですか?」
「おーい明鐘、西守歌、帰るぞー」
「あっ、兄さん、私は片付けしてから帰るから」
「あ、そうか。じゃあ俺も」
「まあまあ、いいから、兄さんはみぃちゃんを送っていってよ」
「な、なんなんださっきから?」
「それでは、わたくしも失礼いたしますわ」
「お嬢さん」
 と、ずっと店の片隅でノートパソコンに向かっていた武笠晴希が立ち上がり、西守歌に声をかける。
「……なんでございますか? 晴希様」
「そういえば、いつぞやの弁償金の支払いがまだでしたな」
「はい? そんなことございましたっけ?」
「ほう……しらばっくれるとはいい度胸ですね。こちらが何も言ってこないのをいいことに踏み倒すとは、それでも有力企業の一人娘ですか」
「お言葉ですが晴希様、現代の法律社会においては、口約束だけの契約など無効。きちんと書類を揃えて、しかるべき手続きを踏んでいただかないことには」
「そうですか。それではあらためてここで申し立てをいたしましょう」
「あ、あのー、おふたりさん? 何を突然……」
 そんな涼に構わず、にらみ合いを続ける二人。
「とはいえ、涼の婚約者たる貴女はもはや身内同然。いまさら些細な金銭問題などで事を荒立たせたくはありません。ここはひとつ、水原家伝統の勝負といきましょう」
「……して、その方法は?」
 そう問いかける西守歌に、晴希はテーブルの上に置いてあったノートパソコンの画面をくるっと向ける。
「麻雀です」
「……望むところですわ」

「……あー、えっと、長引くみたいだから俺達は先に帰ろうか」
「そうだな、水原」
「じゃあねー、百合佳さん、あやめちゃーん」
 と、PC上での麻雀対戦に火花を散らす二人を横目に、涼、笑穂、美紀の三人はプラーヴィを出る。
「それじゃあ、私はこっちの方角だから」
「ああ、じゃあまた明日な、お嬢」
「ばいばーい、笑りーん」
 笑穂が去り、涼と美紀はふたりで最寄り駅まで向かう。
「すっかり暗くなっちゃったねー。ちょっと前までは、7時過ぎでもまだ明るかったのに」
「そうだな、もう秋だしな」
「あたしさ、秋ってけっこう好きなんだよね」
「自分の生まれた季節だからか?」
「それもあるけどさ。なんかこう、舞い散る木の葉に、胸が切なくなるっていうか、ちょっともの悲しい雰囲気になるじゃない?」
「そんなガラかよ」
「なによーそれ。……あー、でも今日はホントいい誕生日だったなー。大満足っ」
「そうか。じゃあ俺からの誕生日プレゼントはいらないな」
「うん。……って、え?」
 そう言って振り返った美紀の目の前に突き出されたのは、涼の右手。その上に、小さなうさぎをかたどった置物が載っている。デパートの値札がついたままの、包装もろくにしていない代物。
「昨日、買い物に行ったら偶然見かけてさ。安かったし……その、別にプレゼントってわけでもないけど、お前、こういうの好きだろ」
「……う、うん」
 そう言って、それを受け取る美紀。ちょっと手のひらで弄んで、顔を上げる。
「ありがとね、涼」
「あ、ああ……」
「お礼にキスでもしてあげよっか」
「なっ!? そ、それは」
「あはは、バーカ。するわけないじゃん」
「お、お前な……」
「……あのさ、涼。こんなときに言うのもおかしいかもしれないけどさ。ちょっと、お願いがあるんだ」
「な、なんだ? 急に」
「その……」
 静寂。蝉の音も、秋の虫音も聞こえない中途半端な季節。
「あ、あたしと、つきあってくれないかな」
「……な、なにー!!?」

(え〜!? ちょ、ちょっとみぃちゃん! どういうこと? 3年間文通を続けた幼なじみもびっくりの展開で、続きま〜す!)
 ちゃっちゃらん♪

次回予告

芽生百合佳「まあ。なんだか大変なことになってるみたいね〜」
水原涼「ってあのー、百合佳さん? もしかして覗いてました?」
芽生百合佳「あら? なんのことかしら?」
益田西守歌「機材はわたくしが提供いたしました」
水原涼「っておい! お前な!!」
陸奥笑穂「しかし守屋の奴、まさか本気とも思えんが……。どうせまた次回は全然関係ない話になったりするんだろう」
水原明鐘「あの〜、そのことなんですけど……。台本には、この続き……『第6.5話 大々甘(だだあま)! 愛と偽りの恋人ごっこ』のウェブ上での公開予定は今のところありません、って」
水原涼「やっぱりかー!!」
陸奥笑穂「というか、そのサブタイトルだけで一部の人には内容が大方予想できる気がするんだが」