2005年07月11日(月)
竹宮ゆゆこ「わたしたちの田村くん」(電撃文庫)感想
ああぁもう、こんなオチにしたら、せっかく序盤の相馬広香の行動がとーってもツボだったのに、辛くて萌えられないじゃないかっ! 一話目の松澤小巻にしたって、裏表紙みたいなウサミミ少女のままでいてくれたら! 切ないよぉー。
……とかいうのが、「萌え」を中途半端にかじった人が陥りがちな典型的ダメ感想(おいおいおい)。や、素晴らしかったですよー。
いいですねぇ。帯に「あなたのツボにくるラブコメディー」なんて書いてあったんですけど、電撃にしては珍しくその通りでした(失礼)。なんとなく滝本竜彦を思わせる軽快な文体。
で、さらに滝本竜彦と共通してることに、単なるラブコメに終わらないところ。いかにも狙いすました「萌えキャラー」的なヒロインの行動が、実は故あってのことだったというひっくり返しが素晴らしい。正直なところ、相馬さんの話とか、個人的にはけっこう辛いんですけど、でも安易にファンタジーに逃げない態度は立派ですね。
ひとつ文句をつけるとしたら、看板(タイトル)に偽りありなところ。「わたしたちの田村くん」なんて言うから、各女性キャラの視点から見た「田村くん」を描いてくれるのかなーなんて思ってたんですが(実際口絵の文章はそんな感じでした)、本編は始終田村くんこと田村雪貞本人が一人称視点人物で語ってました。ま、こういう文体好きだからいいけどね。
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2005年09月23日(金)
竹宮ゆゆこ「わたしたちの田村くん」2(電撃文庫)感想
うあー、今回も切ない。もはや「ラブコメディー」ですらない気がしますけど。
松澤小巻、相馬広香という二人の少女との出逢いを描いた前巻との「その後」を描く今回。ゲームのようなマルチエンディングが不可能な、小説というメディアならではのストーリィでした。せっかくだから、もうちょっと修羅場ってくれれば良かったのに(えー)。相馬さんが物わかり良すぎますよ。こういうキャラは主人公を虐めてなんぼ(お前な)。
で、今回もオマケというか、むしろこっちがメインみたいな「高浦さんちの家族計画〜その2〜」。なんかもう、いろいろ痛いなぁ。本編からスピンナウトして、この妹さんの話を希望。
2008年01月09日(水)
竹宮ゆゆこ「とらドラ!」1(メディアワークス電撃文庫)感想
評価: 10点[前回比: -](累計: 10/10 平均 10.0)

一家に一匹、手乗りタイガー(匹って言うな)。私にもください。
デビュー作「わたしたちの田村くん」読了から1年半。外伝である「とらドラ・スピンオフ!」を読みかじったのも、はや半年以上前。ようやく、ちゃんと「とらドラ!」本編に手を出すことができました。これは……参りました。完敗です。なんでもっと早く読まなかったかな、かな。かなカナ4文字タイトルで敬遠していたのは失敗でした(いーかげんにしなさいっ)。
もう、キャラクタの綿密かつ粘着質な描写、お約束満載の展開、何もかも素晴らしい。逢坂大河さん素敵です。いやむしろ、「大河!」と呼び捨てにして、思いっきりなじられたい(あんた……)。きわめて個人的には、こういうのに釘宮嬢の声を当てて読んだら負けかなと思ってるのですよ。そういうんじゃないんです、彼女の魅力は。かといって伊藤静さんって感じでもないんですよねぇ。むしろ中島沙樹さんという感じかな(どういう括りで考えてる?)。あ、ぼっちゃまのほうではないです。
この作家さんらしく、最後はちょっと切なかったりもして、滝本竜彦的ネガティブハッピーの雰囲気を感じました。NHK(日本曳かれ者協会)にようこそ! 次巻以降も楽しみです。昨年いっぱいで「R.O.D」を既刊全部読み切ってしまったんですが、これであと半年は戦えますね。
2008年01月18日(金)
竹宮ゆゆこ「とらドラ2!」(メディアワークス電撃文庫)感想
評価: 10点[前回比: ±0](累計: 20/20 平均 10.0)

あみちゃん、つよいこっ。
第二巻読了。ちょっと読むスパンが短すぎるかな……。そろそろ、西尾維新の小説みたく、通勤列車で読むのを控えたほうがいいかもしれないと思えてきました。実際、この素晴らしくテンポの良い掛け合いと、ときどき出てくる特異な言語感覚、そしてなによりツボを外さないキャラクタ造形、ライトノベルとしても圧倒的な読者へのやさしさに満ちた小説です。もう、どのページを開いても幸せな気分になれますね。
まあ、あみちゃんは今回措いといて(次巻以降の展開が目に浮かぶようだ……)、みのりんがなんかすごいキャラづけされてます。ちょっとこれは反則気味じゃないですか奥さん!(だーれが奥さんか) しかしそれでも、大河さんの魅力にはまだまだ敵わないのだから、恐ろしい作品です本当に。
というか、物語における登場人物は互いの関係性の中でしか生きられないのだから、どっちが上とかいう話では本来無いのですよね。みのりんがいて、大河と出逢った竜児。その逆もまた然り。ありていな三角関係ともまた違った、微妙で絶妙なバランス。まあつまり、何が言いたいかというと、あんなふうに虐げてくれる同級生がいてくれたらという、それは淡い空想の世界なのでした。次巻も近いうちに。
2008年02月11日(月)
竹宮ゆゆこ「とらドラ3!」(メディアワークス電撃文庫)感想
評価: 10点[前回比: ±0](累計: 30/30 平均 10.0)

勢いは衰えを知らず第三巻。っていうか、ますますいろんなものが加速していってる気がするですよ。前巻の引きで期待したものをさらに上回る展開。思わず、102ページあたりと、138ページあたりを切り取って永久保存してしまいたくなります(一ノ瀬ことみ禁止)。
ライトノベルにおけるラブでコメなお話の、ひとつの完成形がここにあるんじゃないかと思います。剣も魔法も出てこない、空から美少女が降ってきたりもしない。ごくごくふつーの学園生活を描きながら、ここまで妄想が暴走できるとは、ただことではありません。もちろん、大河さんという完璧なおんなのこの存在こそが最大のファンタジィだと言ってしまえばそれまでですが。
2008年03月11日(火)
竹宮ゆゆこ「とらドラ4!」(メディアワークス電撃文庫)感想
評価: 10点[前回比: ±0](累計: 40/40 平均 10.0)
第4巻は夏休み、海辺の別荘アバンチュール編。フナムシまで出てきて渚もロマンティック。燦ちゃんにも負けず劣らずハイエナジーなみのりんが素敵でした。
そんなみのりんの、これまで見せなかった一面が明かされる今巻。いやまったく、見事に騙されたというか、驚きました。それというのも、視点がずっと高須くんに寄り添っていて、小説として軸がぶれていないからこそ。三人称の小説でも、誰の視点で物語がつづられるかというのは重要で、それによって各キャラの印象がまるで変わってきます。第1巻では高須くんの視点で「憧れの女の子」として登場したみのりん。それが、第2巻くらいからだんだんはっちゃけてきて、今回、彼女自身が感情を吐露することで、人物描写にもう一段深みがかかる。一面的ではないキャラクタを描いてくれる小説が好きなので、嬉しいかぎり。というか、もともと、高須くんにしても大河さんにしても、第一印象と内面が違うというのが特徴にされているので、そのへん意識的なキャラ造形がされているのかなぁとも思います。
何にせよ、個人的には大河さんイチ押しなのは変わらず、この先さらに混沌とした戦況が予想され、実に楽しみです。
2008年04月11日(金)
竹宮ゆゆこ「とらドラ5!」(メディアワークス電撃文庫)感想
評価: 9点[前回比: -1](累計: 49/50 平均 9.8)
最新第7巻も買いましたけど、「スカイ・クロラ」シリーズ同様、毎月一冊ずつ読むことにしてるので。これもアニメ化までには追いつくでしょう。
今回はまったく個人的な好みで、わずかに評価を下げました。や、別に、ゆりちゃん先生30歳独身がフィーチャーされすぎだとかいう問題ではなく。大河さんの悪罵シーンが少なめで物足りないとかいうわけでもなく。目に見えない悪意というのがいちばん厄介だよね、というお話。まあ、シリーズ構成的なことを考えたら、こういう話をどこかでやっておかなければならないとは思うのですけどね。とか、なんだかんだ言いつつ、やっぱりラストシーンはしんみり。手乗りタイガーに涙のティアラは似合わない。
で、アニメ化の話。自分のスタンスとしては例によって、原作通りに絶望も希望もせず、アニメはアニメで楽しませてくれたらいいという感じです。ま、心構えを決めるのはスタッフとキャストが発表されてからですね。ごく稀に、アニメ化なんて知らない何も見てない聞いてない状態になる可能性もなきにしもあらずですが、そこはそれ……。
2008年05月05日(月)
竹宮ゆゆこ「とらドラ6!」(メディアワークス電撃文庫)感想
評価: 10点[前回比: +1](累計: 59/60 平均 9.8)
ちなみに出版社名は刊行当時です。次巻よりアスキー・メディアワークス電撃文庫。って長っ!
そんな生々流転諸行無常の出版業界に負けず劣らず、本編もこんがらがってきました「とらドラ!」第6巻。前半、妙にアレなネタが横行してたりして、シャフトあたりででもアニメ化する伏線かと思いましたが(知りませんけど)。巻を追うごとに増す、張り巡らされた伏線処理の見事さに感嘆します。大長編王道青春らぶこめでぃ。こういうのこそ、文字通り大河ノベルとよぶべきではないのかとも思います。別に12ヶ月連続で刊行しなくても(あ、そこは触れないように)。
2008年06月04日(水)
竹宮ゆゆこ「とらドラ7!」(アスキー・メディアワークス電撃文庫)感想
評価: 10点[前回比: ±0](累計: 69/70 平均 9.9)
■Merry Merrily
ようやく最新刊まで追いつきました。これでもう、来月からは彼女はコンパルでも読むしかありません(そのココロは→いろいろな意味でボリュームが多い)。それはおいといて、今回のお話はクリスマスとかイブとか。サンタさんのために、珍しくいいこな大河さん。って、大河さんはいつだっていいこですよ! とか言ってたら……なんだか大変なことになってます。いや、ゆりちゃん先生(30)が、ではなく。幸せのタマゴ焼き、ただし隠し味は人の暗黒面を煮詰めた出し汁です、みたいな(判らん判らん)。
聖なる夜に舞い降りた恋の天使が放った矢は、その胸を心を、深く深くえぐって。ラブコメでは、相手の気持ちになかなか気づけないでいる主人公なりヒロインなりが出てきたりしますが、他人どころか、自分の気持ちすら、本当は気づけないことがある。これがまた、ここまで巻を重ねているからこそ、とても重く響きます。
■TVアニメとは限らない
ところで、この巻の発売時に発表されたアニメ化の話、その後も音沙汰がありませんね。よく見ると、どこにも「TVアニメ」とは書いてない! ……という邪推はともかく。これ、しかし、アニメにするとありていな鬱展開になりそうな気もしなくなく。アスリードとかZEXCSとか……なんて書くと本当になりそうに思えてきました。2008年08月09日(土)
竹宮ゆゆこ「とらドラ8!」(アスキー・メディアワークス電撃文庫)感想
絶望した! あまりに予定調和な逢坂大河キャスティングに絶望した!
まあまあそれはそれとして。唐突に、あみちゃんかわいいですねっ、とかも言いません(言うてる言うてる)。アニメの話題には触らぬ、ということで。本編は……これは……すごいなぁ。前巻から引き続き暗黒面全開、さながら曳かれ者の小唄。惹かれ、轢かれるお年頃。ゆりちゃん先生(30)の苦悩が目に浮かぶ。大河さんの罵倒に素直に萌えられていたあの頃が懐かしい。
みのりんの「ずっとこのままでいられたらいいのに」というのは、かなえられないこその願い。みんなみんな、いろんなことを知ってしまって、知らなかった頃には戻れない。読者としても、この先に進むのが怖くもありつつ、それでも幸せな結末を願わずにはいられません。たかったんの明日はどっちだ。


