2008年09月05日(金)

西尾維新「偽物語」上(講談社BOX)感想

「ごっこじゃないよ、兄ちゃん」(阿良々木火憐)
「正義の味方じゃなくて正義そのものだよ、お兄ちゃん」(阿良々木月火)

 西尾維新史上最高傑作「化物語」の、後日譚。っていうかアニメ化ですよ新房昭之ですよシャフトですよ。夢にまで見た西尾維新作品アニメ化、ただし本当に夢物語に……なんてことになったら絶望しますが。アニメ化記念でか何か知りませんが、とうとう西尾さんフルスロットル、アニメネタも解禁でしょうか。っていうかやりすぎだ! どれだけ萌えアニメ好きなのだ……。
 そんな感じで「偽物語」第六話「かれんビー」、いちおうのメインは阿良々木くんのかわいいかわいい妹・火憐ちゃんと月火ちゃんなのでしょうが、期待通り……いや期待以上に、「化物語」および「傷物語」の登場人物、ほぼオールキャスト。しかし本当に男が出てきませんね! 阿良々木くん以外唯一の男性陣が偽物にして「敵」である人物というのは、もはや意図的としか思えません。これはいっけん小説に見えるけど、実は18禁恋愛シミュレーションゲームのリプレイなのですよ、とかアニメ放映前に偽情報を流しても信じられそうです。

「阿良々木さん、わたしはとても楽しみにしているんですよ。エンディングテーマで、果たしてわたし達ははどんなダンスを踊るのか」(八九寺真宵)
「踊ること前提かよ!」(阿良々木暦)
 そんにゃにゃか(失礼、噛みました)、やはり再会を心待ちにしていた、心持ち心待ちにしていたのが八九寺真宵ちゃんこと真宵ちゃん。っていうか阿良々木くんがすっかりこどもを近づけちゃいけない危険人物ですっ。女子小学生を、出逢うなりいきなり羽交い締めにする主人公がいまだかつていただろうか。あげくの果てに、成長しないことに価値があるとか何とか……。ダメだこいつ、次巻あたり「二次元最高」とかナチュラルに言い出しそうで怖い。二時限目は体育ですか? 二次元さんお断り(絶望した!)。
「え? 私は踊らないわよ?」(戦場ヶ原ひたぎ)
 この物語の正ヒロインは真宵ちゃんじゃなくて戦場ヶ原さんだという説もあるそうですが。……えー、まあ、ちょっと語りにくいだけであって嫌いじゃないですよ。相変わらず、この危険な魅力にくらくらしますね。阿良々木くんじゃなくてもくららぎくんです。ツンデレというツンデレをツンデレった西尾さんだからこそ書ける、ツンデレの最上級にして最終形(あぁ戯言シリーズっぽくなってしまった)。そういう意味では、たしかに難易度は最高レベル。本作を「化物語」に続くシリーズと捉えるならば、阿良々木くんが彼女のレベルにまで到達する、そしてふたりで「大人」になる、それがこの物語の最後の光景なのかもしれないと思います。大人になれない真宵ちゃんとは、やはり対極をなすキャラクタ。
「阿良々木先輩。それは萌えるがゴミじゃない」(神原駿河)
 もう一人、別の意味で危険なのが神原さん。静岡あたりに舞台探訪に行きたい名前ですが(何のこっちゃ)、この人の台詞は引用したくても危なすぎて使えません。121ページあたり、「200%趣味で書かれた小説」という今回の惹句をしみじみとかみしめました。ぜひとも「となりの801ちゃん」アニメ化中止の雪辱をはらしていただきたいところです。
「撫子、結婚するなら、暦お兄ちゃんがいいなあ」(千石撫子)
 あと、今回、撫子ちゃんが妙な方向へ突っ走っていたのが気になります。あんがい下巻あたりで、妹的存在である撫子ちゃんと、実の妹(たぶん)の火憐ちゃん月火ちゃんとの間で、壮絶な死闘が繰り広げられたりして。そんなしゅららぎさんも見てみたい。

 で、肝心の火憐ちゃん月火ちゃんについてですが。他のキャラクタのどうでもいい会話にページを割きすぎで、彼女たちの活躍があんまり見られなかったのが残念。や、テーマとか二の次で、阿良々木くんとゆかいな仲間たちの掛け合い漫才こそが本シリーズの真髄であるとするならば、それはどうしようもなく正しいのですが。
 妹であるからこそ、他人のようには話せない。言葉にしては伝わらない、拳で語り合うしかないとは何というジレンマ。ヤマアラシのジレンマ。山嵐も蜂も、共通するのは針という凶器。戦場ヶ原さんのホッチキスやエンピツとは、やはり質が違うのでしょう。

 あ、羽川さん(委員長)はめがねっこからジョブチェンジしてしまったのが残念なので割愛。


2008年09月05日 00:47 [] [西尾維新]