2008年09月30日(火)

坂井由人+坂井直人ほか「アニメノベライズの世界」(洋泉社)感想

 書名の通り、数多のアニメ作品を基にして発表された小説を論評した本。いわゆる非公式な二次創作ではなく、あくまで公式に元作品のクレジットがなされた作品が対象ですが、思った以上にその世界は広い。
 前書きにあるとおり紹介される作品は1970〜1980年代が中心。しかも個人的にロボットアニメをまったく観ていないもので、ピンと来ない部分も多いですが、古本屋でちょっと意識して探してみると面白いかもと思える作品がいろいろありました(そもそも、この本自体、シンコ書店ではない古本屋で見つけたもの)。原作マンガをそのままアニメ化した作品に意義を見いだせないのと同様、ただのアニメノベライズには興味がありません状態だったのですが、ちゃんと小説というメディアの特性を活かして、さまざまな趣向が凝らされている、そんな作品も多くあるようです。
 小説とアニメの違いは何かと言えば、映像と活字という表現形態の違いは言うに及ばず、最終的に一人の文責にかかっているかどうか、という点も大きいと思います。エラリィ・クイーンや岡嶋二人のようなコンビ作家という例外もありますが、その場合でさえ、あたかも単一の作者のような名称がつけられている事実が、かえって作者という存在が一個人によってたつもの、という思想を強調している。
 アニメの場合、監督が毎回絵コンテを切ったり、シリーズ構成が全話の脚本を担当することさえ珍しいケース。それに対し、小説の場合は一人の作家に(いろいろな制約はあるにせよ)物語が委ねられる。だからこそ、その人の個性、作品の捉え方が色濃く出るのだと思います。アニメ本編の補完なんてレベルを超えて、新たな世界を紡いでいく、それが本当に「小説」とよぶにふさわしいもの。最近では宮村優子による「電脳コイル」のノベライズが特筆すべき作品でしょうか。


2008年09月30日 23:56 []