2008年06月06日(金)

森川楓子「林檎と蛇のゲーム」(宝島社)感想

■このミス大賞受賞せず作

 「このミス」って、「この子を見捨てるなんてそれでも母親ですか!」の略でしたっけ。この界隈は今までまったく手をつけてなかったのですが、最終選考に残りつつ、受賞されなかったという事情に興味を持ちまして。とりあえず大森望が推薦しているのならきっと大丈夫。いい意味で!

■発想勝ちの非ゼロサムゲーム

 ということで読んでみたところ、期待以上、実に実に面白い。中学三年生の少女・珠恵ちゃんと、友人のツルちゃんのたわいない会話から引き込まれ、謎の女性・水野さんの登場で事態はホームスイート・ステップマザーステップ。と思いきや、西澤保彦もかくやという時ならぬ悪意の奔流に驚く暇もあればこそ、きっちり50ページ強進んだところで事件を勃発させる律儀な本格ミステリ魂。二転三転、先の読めない展開に夢中でページを繰るうちに、不思議なタイトルの真意が明らかに。もう、この発想を形にした時点で小説としての価値はあると思います。まさにゲーム的。それも、大勢がよってたかって干渉し合い、総じてみてもすべてが0になるわけではない、非ゼロサムゲーム。事件が終わって、誰かが特別幸せになったわけでもない、いろいろ禍根を残しているのに、後味はけっして悪くない。

■子供だましでこどもはだませない

 当然ながら、投稿時点からリライトはされているのでしょうが、タイトルは変わってないようですし、りんごで言えば芯の部分は最初から存在していたのではないかと思います。こういう小説に、非現実的とか御都合主義とか、そんな批判をする人が信じられない。
 この作家さん、既に別名義でデビューしてるらしいですが、ジュニア小説家と書かれていたり、ライトノベル系と書かれていたり、詳細は不明(ライトノベルと児童文学とジュブナイルはまたそれぞれずいぶん違うと思いますけど)。いずれにせよ、比較的低い年齢層を相手にしているからといって、物語構成力が弱くていいわけがない。子供だましというけれど、そんなものではこどもはだませない。まあ、なんというか、世の中には、小説の登場人物よりもよっぽどステレオタイプなものの見方をする人がいるのだなぁと思う次第。
2008年06月06日 23:55 []