2008年06月24日(火)

早矢塚かつや「悠久展望台のカイ」(MF文庫J)感想

■世界の恋人

 「死神ナッツと絶交デイズ」の作者のデビュー作。あちらは個人的に「裏・スクイズ」と形容したい作品でしたが、こちらもダークなファンタジィ。ひょんなことから「世界の恋人」となった少女、響依泉子。この場合の世界というのはたんなる比喩ではなく、まして世界くんという名前の子でもありません。そんな彼を通じて、本来なら知り得なかった、あるいは知るべきではなかった、この広い世界の片隅で起こった出来事ー「どこか遠くの物語」に触れることになる依泉子。そして、彼女の物語が動き出す。

■悲しみの向こうへ

 しかして、ここに紡がれる物語の、たとえようもない切なさといったら。実の兄を、兄以上の存在として慕う妹。かなえられない想いの果ての悲劇。あぁもう、デビュー作からこんなもんを書いてくるとは、あんたは佐藤友哉か! ……すみません言い過ぎました。もとい、麻耶雄嵩か!(余計どうかと) とはいえ、最終的にはハッピーエンド志向なのがまだしもの救い。著者の個人的戦争も終結したそうなので、また第三作で新たな夢の扉が開かれることを楽しみにしたいところ。
2008年06月24日 23:02 []