2008年06月17日(火)

恩田陸「『恐怖の報酬』日記ー酩酊混乱紀行」(講談社文庫)感想

■麦酒の工場を冒険すること

 いわゆる紀行エッセイ、中身はイギリス・アイルランド取材旅行と、何故か国内ビール工場見学という取り合わせ。なんだか恩田陸の印象がちょっと変わりました。ミステリをこよなく愛するファンタジックノスタルジィ作家、みたいな風に捉えてたのですが、認識訂正。ミステリとビールをこよなく愛する、ファンタスティックノスタルジィ作家(和製英語にご用心)。本を読むときにはアルコールが入った状態でいるべきではない、などというストイックな主義は持ち合わせていない私ですが、西澤保彦以上に、これはビール片手に読みたい本かもしれません。やりませんでしたけど。 

■恩田陸の想像力に驚嘆すること

 本文中で何度も語られているとおり、著者はどうやら飛行機が苦手のようなのですが、その理由が「あんな大きなものが空を飛ぶなんて信じられない」なんて生易しいレベルではない(ちなみに全然関係ないですが、「コンタクトなんて小さなものを目に入れるなんて信じられない」と言うめがねっこが私は大好きです)。飛行機という大きな密室が何時間も空を飛んでいるのを想像すると、小説や映画の中のような恐ろしい状況がいくらでも起こりそうで怖いのだという、なんとも作家な理由。また、旅先の風景を眺めながら、小説の中の一シーンを思い描いているらしい一節もあったりして、恩田陸という作家の文字通り想像力が創造力に変わる瞬間に立ち会った気分になりました。
2008年06月17日 23:19 []