西尾維新「クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識」(講談社文庫)感想
「でもでもでもっ、それでも話も聞かずに断るなんて、いっくん滅茶苦茶だよっ! ≪中学二年生にしてバンド結成、ただしメンバー全員ベース≫みたいなっ!」(葵井巫女子)
■戯言シリーズ第二弾
隔月刊行西尾維新文庫。今巻は、前回に比べるとイラストのモアレが改善されていて剣呑剣呑(誤用)。表紙の巫女子ちゃんも愛らしさひとしおというか、ノベルス時の「仕掛け」が今回も引き継がれているのも嬉しい。「ヒトクイマジカル」ではどうなるのか楽しみです(注:ノベルスではリバーシブルカバーと称して、裏面にも印刷が施されていた)。そんなことを言ったら次巻の「クビツリハイスクール」は密室本にするのかという話ですが。
■2002年の真空パック
それにしても、今回もアトガキを除く本編はほとんど修正されていない様子。たまに、「こんな文章あったっけ?」と思ってノベルス版を読み返してみると、単に自分の記憶が飛んでただけだったり。
世の中には二種類の作家がいて、文庫化に際しては誤字脱字の必要最小限の修正にとどめる人と、より完璧を目指して改稿を加える人とがいるーーとするならば、西尾さんは前者なのでしょうか。もちろん、どちらも相応の理屈があるのでしょうが、こういう作品の場合、書かれた当時の雰囲気とか、それに対する作者、あるいは読者の自意識みたいなものが作品に陽なり陰なり表れているように思えます。であればこそ、ノベルス刊行時の、あの時代の空気をそのままに真空パックして文庫化した、ということかもしれません。戯言ですが。
■姉三六角みこ巫女子ちゃん
ということで今回の主役は、そんな悩める少年少女の心を体現し、昇華した巫女子ちゃんこと葵井巫女子。いや、副題の零崎人識は完全なフェイクですし。改めて読み返しても、巫女子ちゃんの壮絶な萌えキャラぶりには感嘆します。冒頭に引用したのが、自分もよくパスティーシュさせていただく巫女子ちゃん流比喩、その第一弾。誰が言ったか、萌えキャラ殺しの西尾維新。残留度ではシリーズ中でも屈指です。しかし対照的に、やっぱり今回もシルエットですらイラスト化してもらえない秋春くんを思うと、えっと、まあ、どこかで浮かばれることもあるのではないでしょうか。
まったく、西尾維新の男性キャラと女性キャラに対する描写テンションの違いが、既にこんなところからはじまっていたとは慄然とする思いです。このあと、更に戯言シリーズ全登場人物の男女別の平均年齢を算出してみたりすると、いろいろ興味深い事実が浮かび上がりそうな気もしますが、それはまた別の機会に。
2008年06月15日 21:40
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