2008年06月15日(日)

針谷卓史「花散里」(講談社BOX)感想

■それは投扇興のように

 タイトルで購入を決めたようなもん。まあ、「えう゛りしんぐいずぼっくすと」な KODANSHA BOX のこと、中身を立ち読めない道理ですが。タイトルは源氏物語の一篇、あるいは、作中にも出てくる投扇興に由来するのでしょうか。
 投扇興とは、台の上に銀杏形の的を置き、扇を投げて落とす競技。落ちた的と扇、台の位置関係で点数が決まる。「花散里」は、その一流派・其扇流において、「ただ的を落としただけ」という最低点を与えられる形ですが、裏を返せば、もっともありふれた可能性。平凡な大学生の日常を、淡々と描く物語。過度の期待を抱きつつも、ここは角川ではなく講談社なのでした。

■正統派大学生小説

 ということで、実に正統派な大学生物語。森見登美彦や滝本竜彦に比肩しうる才能かもかも。主人公の男の一人称語りに共感するかイライラするかは、読み手の感性に委ねられる部分かもしれませんが。それは措いても、女性陣の描写が魅力的。例を挙げるならば、相場さんの声が松岡由貴さんに聞こえるような。かといって、津村真衣は中原麻衣かと言えば、そんな名前だけで決めるキャスティングはいかがなものかと思う気持ちもなきにしもあらず、さにあらずんば、その節は前向きにご検討ください。
2008年06月15日 21:37 []