豊島ミホ「カウントダウンノベルズ」(集英社)感想
■カウントアップノベルズ
とある週のJ-POPヒットチャート。そのトップ10にランクインしたアーティストたちの軌跡を描いた、タイトル通りの連作短編。
……という説明には嘘があって。それが、この作品の最大の難点。このご時世にアニメソング・声優ソングがまったくランクインしてないのが不思議だとか言いたいわけじゃなくて。短編はたしかに10本、10組のアーティストを主役にしているのですが、最初の一篇が第一位のアーティスト、その次が二位さん……と、カウントダウンならぬカウントアップ形式なのです。ひょっとして叙述トリックなのかと疑ってしまったのですが、このタイトルと本編構成の齟齬がどうにも気になりました。
とはいえ、構成的にはこれで正解なのでしょう。後半に行くに従って、つまり順位が下がるに従って、どんどん面白くなっていく。人気絶頂だったり、上り調子だったりするアーティストの話よりも、もう後がない歌手の話のほうが圧倒的に面白い(あくまでこの小説のことであって、現実の歌手の好みではありません)。そんな話が続いて、ラストの一篇が見事。歌をうたうということ、自分の想いを世界に伝えるということ。より根源的には、人は何故表現をしようとするのか。そのひとつの本質がここに。
2008年06月17日 23:14
[本]