小路幸也「東京バンドワゴン」(集英社文庫)感想
「にゃあだねぇ。やっぱり LOVE は鳴かないとねぇ」(堀田我南人)
■メフィスト賞作家
作者は第29回メフィスト賞でデビュー。受賞作しか読んでませんでしたが、あまりメフィスト賞らしくない感じ。とか言うと、「らしい」って何? 森博嗣や西尾維新や古野まほろがメフィスト賞らしいのか、という話になりますが。作家を勝手に「らしい」「らしくない」だなんて決めつけるなどおこがましい、らしいのはラシック(三才)だけで良いのですよ、とか名古屋ローカルなことを言ってみたりして。
■幸せオーラ漂う古本屋ホームドラマ
まあまあそれはそれとして。本作は「東亰バンドワゴン」という古本屋の大家族を舞台にした、ファンタジック日常ホームドラマ。なんて、あらすじだけでは想像できないくらい、これがめちゃめちゃ面白い。各章は「日常の謎派」的なミステリ仕立てになっているのですが、その解決のされ方が幸せ感あふれる特異なもの。幸せオーラ発散という点では、森見登美彦氏の「夜は短し歩けよ乙女」にも匹敵する……というと褒めすぎでしょうか。こういうのもマジックリアリズムというのか、いまだによく判りません。
■LOVE の証
やはり、物語を統べるのは LOVE なのですね。事あるごとに LOVE を語るのは、御年60歳、「伝説のロッカー」なる異名を取る我南人さん。その存在感をどうしたら伝えられるものでしょうか。その孫の、花陽ちゃん(小学6年生)がかすんでしまうくらい、と言えば解ってもらえるでしょうか(解ってくれとは言いません)。この人だけでなく、登場人物がみんな魅力的。古本屋を舞台にしておきながら、本だけに過度な愛情を注ぐわけではなく、聞こえるのは、そこに集う人々の息遣い。良い小説でした。
2008年05月23日 23:22
[本]