2008年05月05日(月)

竹宮ゆゆこ「とらドラ6!」(メディアワークス電撃文庫)感想

評価: 10点[前回比: +1](累計: 59/60 平均 9.8)

 ちなみに出版社名は刊行当時です。次巻よりアスキー・メディアワークス電撃文庫。って長っ!
 そんな生々流転諸行無常の出版業界に負けず劣らず、本編もこんがらがってきました「とらドラ!」第6巻。前半、妙にアレなネタが横行してたりして、シャフトあたりででもアニメ化する伏線かと思いましたが(知りませんけど)。巻を追うごとに増す、張り巡らされた伏線処理の見事さに感嘆します。大長編王道青春らぶこめでぃ。こういうのこそ、文字通り大河ノベルとよぶべきではないのかとも思います。別に12ヶ月連続で刊行しなくても(あ、そこは触れないように)。

「かしまし〜ガール・ミーツ・ガール〜」(AT-X/EMOTION)感想

 これも2年越しに……。TV放映分の12話に加え、第13話(DVD第7巻)まで視聴完了。第13話、いくら何でも、それまでの展開を覆すような話にはならないだろうと思っていたのですが、意外にも転覆していたので驚きました(転覆?)。TV未放映回を前提で組み立てるシリーズ構成ってどうなのよ、と思いつつ、対価は払わなければいけないという原則に鑑みて……というか、放映中止になったわけでもないからまあいいか、と、丸くならざるをえない昨今です。
 それはそれとして。いっけん真逆の結末のように見える第12話と第13話ですが、その実、鏡のこちら側と向こう側のような対称性をもっているのかもしれません。折り紙で言うだまし舟みたいな(舟?)。あゆきちゃんが指摘しているとおり、あんがい似たところのあるとまりちゃんとやす菜ちゃん。第12話では、とまりちゃんをメインにしつつ、結末はやす菜ちゃんに向かう。第13話は逆に、やす菜ちゃんの視点で描きながら、とまりちゃんとのハッピーエンドを迎える。どっちつかずといえばどっちつかずなんでしょうけど、DVD封入の監督インタビューの言葉を信じれば、それこそが狙い通りだったようで。最初からちゃんと見返すことでよく判ったのですが、そういう対称性は、シリーズ通して至るところに描かれています。そうやって二人の間を行ったり来たり、揺れ動いている状態をこそ楽しむべき作品だったのでしょう。同じバンダイビジュアル、OPテーマ eufonius ということで言えば、「true tears」とは、その点で似て非なる作品。
 とりあえず自分にとっては、とまりちゃんがTV放映時にも増して素敵で可憐で愛しき君でした。これに関してはオルタナティブの余地もなく。はずむくんでも到底敵いません。さて、次は「極上生徒会」でも見返しましょうか……。

2008年05月06日(火)

0verflow原作/秋月ひろ著「-TV Anime- School Days イノセント・ブルー」(JIVE CHARACTER NOVELS)感想

 原作ゲーム版のノベライズではなく、ゲーム版を原作としたTVアニメ版のノベライズ(ややこしい)。脚本も担当した著者が、シリーズ全13話を世界さんと言葉さん、それぞれの一人称視点で描いた作品。
 筋立て自体はアニメ版とまったく同じなのですが、視点人物というものが極めて意識的に再構築されているために、小説として完成度の高いものになっています。もちろん、尺を一冊に収めるために、カットされる部分があったり、よくあるライトノベルにも増して情景描写が不足してたりするわけですが、その視野狭窄的な点もまた、ラストのせつなさを増しているよう。言葉さんパートだけが敬語なのが冒頭から怖くて怖くて。世界さんはリアルタイムにその時点での感情を吐露している感じなのに対し、言葉さんはより冷静に、すべてが終わった後で想い出を反芻しているような印象を受けました。ラストシーンからの後付けかもしれませんけど。
 そして、あとがきでも言及されてるとおり、もうひとつ問題になるのが、彼女たちの知らない部分は描かれないという点。そのおかげで、刹那さんがこんな描かれ方をされることに。うぅむ、しかし仕方のないことではあります。刹那さんの一人称が出てきてしまうと、それはもはや「School Days」という作品の枠を外れてしまうのですから。……えーと、実は、つい最近「Summer Days」のDVD-PG を購入してしまいまして。刹那さんに感情移入しきりな次第です。といいつつ一巡目は、何故か心ちゃんルートに入ってしまって、通称スクイズとは別の意味で鬱展開だったのですが。私には刹那さんをせっちゃんとよぶ資格は無いんだっ。……まあ、それはおいといて。そんな刹那さんや心ちゃんや卯月ちゃんや止ちゃんをよそに物語が進行していったことこそ、ある意味救いだったのかもしれない「School Days」。裏表紙の心ちゃんがオビで隠されてしまっているのも、何か深い意味があるような。

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2008年05月13日(火)

「極上生徒会」第1話 拝啓、ミスター・ポピット(コナミマルチメディア)感想

■極上声優陣

 「Solty Rei」や「なのA's」と迷ったりもしつつ、今週からの再見アニメはこれに決定。これも何度観ても楽しめるというか、幸せな気分になれるというか。ここまで幸せオーラ発生装置な作品というと、他には「Φなる・あぷろーち」ぐらいじゃないかと思います(今期だと、今のとこ「かのこん」が匹敵するレベル)。「砂沙美☆魔法少女クラブ」は別の意味で幸せになれたりしますけど……。
 ともあれ、この幸せ感の要因のひとつとして、やはり声優力というものを挙げないわけにはいかないでしょう。第1話から、西の田村ゆかりさまに東の斎藤千和嬢を配する鉄壁の布陣。田村ゆかり脇役最強説を採る私ですが、こう全編しゃべり通してくれると、最高です貴女っと言わざるをえません。まあ、この作品の場合、そのうち主役なのに目立たなくなるので……(なんてことを)。

■エクスキュースなしの導入

 シリーズ構成的に、この第1話を捉えると、あらゆることがエクスキュース(言い訳)無用に進んでいくのが最大の注目点。「理屈は判らんが」とか「よくわからないけど」みたいな言い回しが頻出して、ノリと勢いにまかせて突っ走るような世界観。主役であるところの蘭堂りの@田村ゆかりからして、手にプッチャンという謎の人形をはめていて、相対した人間にそれを無言ではたき落とされるがままという無茶なキャラづけ。
 そうやってツッコミどころを無数に分散することで、極上生徒会という舞台そのものに対するツッコミを回避しているかのよう。実際、極上生徒会の極上たる所以は次の第2話で、これ以上ないくらい簡明に描かれますので。アニメの生徒会は変人の巣窟とか、偶然入居した女子寮は美人ばっかりとか、久米田康治が言いそうな「お約束」を体現した上で、その一歩先へ進んだ世界。それこそが極上。上には上がいると言うけれど、極上には極上しかないのかも。それとも下克上?(それは清涼院流水) 一介の転校生にすぎなかった蘭堂りの、その宮神学園下克上物語が、ここから幕を開ける(そういう作品ではありません)。

2008年05月14日(水)

西澤保彦「謎亭論処ー匠千暁の事件簿」(祥伝社文庫)感想

■タック&タカチシリーズ

 また西澤作品が何冊かたまったので、読み進めます。今回はタック&タカチシリーズ(命名・森博嗣)。その名の通り匠千暁(通称タック)と高瀬千帆(通称タカチ)、その他数名のキャラを中心とした連作。これに限ってはシリーズ何作目かというのは意味をなしません。出版社もバラバラ、描かれる作中の時代もバラバラという、時系列レーベルくるくるシャッフル状態なので。とくに今回は短編集なので、一冊の中でも時系列が錯綜。

■酩酊のロンド

 しかし、それでも読みにくさがまったくないのは、ひとえに酩酊推理ともよぶべき、このシリーズの特異な謎解きスタイルにあるでしょう。彼らの前に立ち現れる不可解な謎。それを酒の肴と、あーでもないこーでもないと杯を交わし酌をくみくみ、もはや妄想の領域に達するような「真相」に至る。時が流れ、彼らの立場や関係が微妙な変化を遂げても、それは変わらない。ねこは時空を超える生き物といいますが、この場合、トラも時空を超えるのでしょうか。同じネコ科ですし(誰がうまいこと言えと)。 

■時ならぬ悪意の奔流

 そんな感じで表面的には軽快なタッチの作品なのですが、そこはそれ西澤保彦。いつもながら、謎の真相に潜む、人間の悪意が鮮烈。「時ならぬ悪意の奔流」というのは、作中人物が漏らした言葉ですが、言い得て妙。町の交差点の曲がり角で、駅のホームから列車に乗り込んだ矢先で、学校の体育館裏で、ふとした瞬間に否応なく目にしてしまう悪意。この人はひょっとして、現実に存在するそんなものに耐えられなくて、作品の形で昇華しようとしているのではないか、そんなことも思ってしまうのです。どの一篇をとっても、膨らませれば鬱アニメの一クールくらい作れそうです。
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2008年05月15日(木)

「魔法使いTai!」TVシリーズ(AT-X)感想

■裏・おジャ魔女

 OVAシリーズの後に制作されたTVシリーズ。監督は引き続き佐藤順一。本放映は「おジャ魔女どれみ」(無印)と同時期だったようで。今回も偶然この世に偶然なんてないテレ朝チャンネルで無印が放映中で、並行して視聴してみると感慨深いものがあります。高倉先輩の妹@石毛佐和さんがぽっぷちゃんに聞こえて仕方ないとか、茜ちゃん自分のために魔法使っちゃダメって言うてるやん! とか、ななかちゃん@飯塚雅弓が斎藤千和みたいだとか。あ、最後のは別か……。

■脱・魔法少女クラブ

 しかし、当然ながら想定する主視聴者層の違いから、ずいぶん作風が異なっています。OVAでも、いわゆる「おっとな〜」な描写はありましたけど、本作はさらに別の側面から「魔法少女」という存在、魔法というものの意義について掘り下げようという試みがなされているようです。ただ、それが最終的に成功しているかは疑問の残るところではあります。押井守になったり、がくえんゆーとぴあを作ったりしつつ、後半はひたすら暗くてよく判らない話が続いて、魔法少女ものの陽的なカタルシスが感じられなかったのは残念(そもそも、そういうものを期待すべきじゃないのかもしれませんけど)。「魔法は人を幸せにするの?」という問に対する解答は、アルスちゃん率いる魔法少女隊の登場を待つことに。

■ふたご姫のたまご?

 さて、では本作が、のちの佐藤順一作品に与えた影響を考えてみると。絵コンテ・演出陣に河本昇悟や藤本義孝(!)がいたりして、プリンセスチュチュを経て、魔法少女ものの変形とも言える「ふしぎ星の☆ふたご姫」にまでつながっているのかな、と思います。高倉先輩の天敵・深山瑞葉(高飛車女)の取り巻きにも、ふたごの生徒がいたりしますし(残念ながら男ですが)。深山瑞葉みたいな役どころは、アルテッサ@水橋かおりというツンデレキャラに進化を遂げるわけですが、中の人である佐久間レイはマイメロになったりして、つくづく深遠なるアニメ史を思わせます。
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2008年05月18日(日)

「ジャングルはいつもハレのちグゥ」(テレ朝チャンネル)感想

■こども向けアニメらしからぬメタギャグアニメ

 水島努初監督のTVシリーズ。以前から評判は耳にしていたので、この機会に初視聴。しかしまあ、すごいの一言。第1話から最終話までメタなネタをやってみたり、おっとな〜な話になったり。果たして今、この内容を地上波で、せーしょーねんのしちょーにはいりょすべき時間帯に放映できるのかと考えると、いろいろ思うところはありますが。大概の演出には驚かなくなった中、第19話で、魔法少女@田村ゆかりが出てきたのには驚きました。

■ヤマカンはいつも

 それでも、水島監督は言わば正統派のギャグアニメ作りをしているのに対し、ときどき明らかにテンションが異常な回があって、それがことごとく山本寛(通称ヤマカン)絵コンテ。あらためて、その才能を思い知らされました。ハレ晴レのち☆のちハレ! ということで、今後ますますのご発展をお祈りいたします。

■母と子の愛憎劇

 そんな刹那的ギャグアニメの側面だけでなく、二クールものらしく、ちゃんとシリーズを通したテーマが横たわっているのがこの作品。見え隠れするハレと母親のウェダの共依存、そしてウェダとその母の確執というお話が、思った以上に前面に押し出されてきました。そのおかげで、終盤ジャングルを出てから、じゃっかんテンションが下がってしまったのが残念ですが。や、ハレのテンションの高さは変わらないのですが、ジャングルという群像劇の舞台が壊れたこと、言い換えれば、マリィ@松岡由貴さんの出番が減ったというのが非常に惜しい。そんなマリィになつかれてるのが不本意ながら、保健医@真殿光昭というキャラが意外に好きでした。ダメな大人が頻出する本作品で、中でもハレにとっての諸悪の根源、元凶のようなキャラクタなのに、何故か憎めない、不思議な立ち位置でした。
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2008年05月19日(月)

鹿島茂「子供より古書が大事と思いたい」(文春文庫)感想

■こしょのじかん

 もはや、タイトルだけで買ったようなもんですが。古書より大事にできるこどもがいない人間はどうすればいいですか! というのはおいといて。
 古本マニアな著者の生態をつづるという趣向の本も数多いですが、これは中でも変わった作品。なんと言っても、著者の専攻は19世紀のフランス古書。フランスの古本屋さんのけったいな営業姿勢(褒め言葉)とか、本の装幀・挿絵の歴史とか、日本の古本マニアとは一味違った視点の話が楽しい。かつての本は、はじめから装幀がされているものではなくて、買ってから装幀を専門の業者に頼んでいたなんて、不勉強にもまったく知りませんでした。 

■バブル崩壊

 と、途中までは楽しく読めていたのですが、古書蒐集に夢中になるあまり、大学教官の身で方々から借金をしているとか書いてあって、大丈夫なのだろうかこの人、と不安に思ってしまいました。
 しかし、著作も多いようですし、つい先日も、本書の新装版らしい単行本を新刊書店で見かけたりもしましたので、大丈夫なんでしょうきっと。
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磯光雄原作/宮村優子著「電脳コイル」5(トクマ・ノベルスEdge)感想

■ノベライズ以上の小説

 アニメとはまた違った世界観を疾走する、小説版「電脳コイル」。ここにきて、完全に小説オリジナルのエピソードが描かれ、小説単体としても名作になりそうな予感。唯一「子ども」という表記だけは気になって仕方ないのですが。
 アニメ以上に徹底して描かれるヤサコとイサコの対立。それが今巻でひとつのピークを迎え、おそらくは両者にとって永遠に忘れられない夏の日の記憶となる。これがアニメ最終話「ヤサコとイサコ」に対応する話だとしたら、この先は、どんなものを描いてくれるのでしょうか。

■茅の輪をくぐる頃に

 その特別な「夏の日」というのが、茅の輪くぐりとよばれる神事の行われる日。なんだか「ひぐらしのなく頃に」みたいな、ただし梨花ちゃまの演舞はありません! みたいな。
 ここでさらに「ひぐらし」との類似点として出てくるのが、こどもと大人という対立軸。ある事件がきっかけとなって、こどもたちが電脳メガネを使うことを好ましく思わない大人たち。少年少女たちに投げかけられる、明確な悪意。これもアニメ第24話「メガネを捨てる子供たち」の変奏とも言えなくもないですが、さらに小説版では、メガネをかけられる年齢に上限がある(実は下限もある)という設定があるので、より意識的に、今後のメインテーマとなってくるものと思われます。ヤサコの祖母・メガばあすら敵かもしれないという台詞まで出てきてるので、かなり殺伐とした話にもなりそうですが、果たして。

■匂い立つ物語

 それにしてもこの作品、読んでいる途中で思ったのですが、「匂い」の描写の使い方が実に巧い。ネタばれになるので詳細は避けますが、とある食事の匂いの記憶が、作中のキャラクタが心を通わせるきっかけになったり、イサコという存在を携行するドライジンジャーの匂いで隠喩したり。
 このあたりはやはり小説の力というべきでしょう。「○○の匂いがする」と小説なら地の文に書けても、アニメでは台詞にするほかなく、くどくなってしまいがち。いくら作画に力を入れても、情景が匂い立つまでの雰囲気を作るのは至難の業。匂いの出るTVが実用化されないかぎり、あるいはハウス世界名作劇場でもないかぎり、それが映像メディアの限界でしょうか。同じように、電脳メガネが映し出す世界にも(おそらく)嗅覚は存在しないので、対比としての生身の世界をより強調している、とも言えます。

2008年05月20日(火)

「魔法少女隊アルス the Adventure」(ファミリー劇場)感想

■すいーつたんぺんたい

 二ヶ月くらい前に放映されたスペシャル版、ようやく観ました。二時間以上あるので大長編かと思ったら、前後編x6話のオムニバス形式、小説でいうと短編集みたいな感じでした。どうでもいいような閑話から物語の根幹に関わるような話まで、いい意味で玉石混淆。本編で回収できなかった伏線の落ち穂拾いみたいな話が好きなので。

■スーパー広橋涼アワー

 しかし、久しぶりに魔法少女隊の三人にも逢いましたが、アルスちゃんシーラちゃんは言うまでもなく、なんか今回はエバちゃん@広橋涼が大活躍。さいきん旧作でも新作でも広橋涼さんづいていて、遅ればせながらに魅力を再発見という感じでしょうか。そんな話の続きは「バンブーブレード」(まだAT-Xでは放映中)の感想時にでも……。

2008年05月23日(金)

田中ロミオ「人類は衰退しました」3(小学館ガガガ文庫)感想

■黒いようせいさん物語

 シリーズ第三弾ですが、巻を追うごとに黒さが増している気がします。この黒さに比べたら「灰羽連盟」なんか、まだまだ灰色です(まあ灰羽だから)。

■ジャンル分け無用

 舞台は遠い未来、高い技術力を誇った人類文明が衰退して、今や地球の支配者は、ちっちゃなようせいさんたち。そんな、ファンタジィなんだか何なんだかよく判らない世界観でお送りするシリーズ。しかし今回は、ようせいさんの力も借りられず、主人公が廃墟となった要塞都市を彷徨うという、さながらパニック文学。しかも最後は何故かハードSF。こういうのがあるから、やはりライトノベルは油断ならない。小説の新たな地平が、たしかにここにあるのかも。
23:20 Permalink []

小路幸也「東京バンドワゴン」(集英社文庫)感想

「にゃあだねぇ。やっぱり LOVE は鳴かないとねぇ」(堀田我南人)

■メフィスト賞作家

 作者は第29回メフィスト賞でデビュー。受賞作しか読んでませんでしたが、あまりメフィスト賞らしくない感じ。とか言うと、「らしい」って何? 森博嗣や西尾維新や古野まほろがメフィスト賞らしいのか、という話になりますが。作家を勝手に「らしい」「らしくない」だなんて決めつけるなどおこがましい、らしいのはラシック(三才)だけで良いのですよ、とか名古屋ローカルなことを言ってみたりして。

■幸せオーラ漂う古本屋ホームドラマ

 まあまあそれはそれとして。本作は「東亰バンドワゴン」という古本屋の大家族を舞台にした、ファンタジック日常ホームドラマ。なんて、あらすじだけでは想像できないくらい、これがめちゃめちゃ面白い。各章は「日常の謎派」的なミステリ仕立てになっているのですが、その解決のされ方が幸せ感あふれる特異なもの。幸せオーラ発散という点では、森見登美彦氏の「夜は短し歩けよ乙女」にも匹敵する……というと褒めすぎでしょうか。こういうのもマジックリアリズムというのか、いまだによく判りません。

■LOVE の証

 やはり、物語を統べるのは LOVE なのですね。事あるごとに LOVE を語るのは、御年60歳、「伝説のロッカー」なる異名を取る我南人さん。その存在感をどうしたら伝えられるものでしょうか。その孫の、花陽ちゃん(小学6年生)がかすんでしまうくらい、と言えば解ってもらえるでしょうか(解ってくれとは言いません)。この人だけでなく、登場人物がみんな魅力的。古本屋を舞台にしておきながら、本だけに過度な愛情を注ぐわけではなく、聞こえるのは、そこに集う人々の息遣い。良い小説でした。
23:22 Permalink []

2008年05月24日(土)

「こどものじかん」(EMOTION)感想

■まほう解除版

 DVD全6科目、授業終了ということで、帰りの会。本放映時は、のの字だったり、くろちゃんの台詞の大半がピヨピヨで消されてたりのデチューン版でしたが、これが本来の姿。当初は、こういうの趣味じゃないんだけどなぁ……とか思いつつ、視界良好、テンポの良い演出に乗せられて、気がつけばすっかり完全肯定もーど。小学校だけに校庭みたいな(小矢島先生ギャグ禁止<小矢島先生はそんなこと言いません!)。くろちゃんは素晴らしい。みみちゃんは愛らしい。りんちゃんは愛おしい。オーディオコメンタリの主演声優の皆様におかれましても、夢と感動をありがとう。

■すべてのこどもだった大人へ

 本質的なテーマについては、本放映時に感じたことからそれほど変わってはいないのですが、まあ社会情勢の変化とかいろいろあって、より考えさせられました。ひとつだけ言うとしたら、やはりこの作品は、すべてのこどもだった大人に向けた作品だということ。悪い意味で大人になれず、結果としてこどもの声に耳を傾けられなかったレイジー。対照的に、立派な大人にはまだまだ道は遠いけれど、こどもからも教わることはあるという姿勢を取れる青木先生。辛い記憶は忘れてもいいと秋さんは言うけれど、忘れられない想い出も、きっとあるはず。

■二学期にまた会いましょう

 そして、第二期制作決定。果たして、今度もちゃんとウェブ配信できるのだろうかとか不安はありますが、とりあえずBS11には期待をしておきます。たとえのの字だろうと、OVA(OAD)版すら放映してくれた放送局ですから。

2008年05月25日(日)

「おねがい☆ティーチャー」(AT-X)感想

■ふつー

 サンリオじゃないほうのおねがいシリーズ第1弾。タイトルだけは以前から知っていたのですが、実際観てみると……。何だろう、「HAPPY☆LESSON」あたりと勘違いしていたのかな。もっとドタバタでコメな話だと思っていたのですが、意外にふつー(ふつーって言うなぁ)。DVD特典らしい第13話だけは井出安軌監督&八谷賢一絵コンテで、まじかる?ぽか〜んというか、彼女は混沌に恋してる話でしたけど。やらんとしていることは判るのですが、どうにも男キャラが全般的に自分勝手な印象を受けて、お話に入り込めなかったのが残念です。

■苺さんましまろ

 というか何と言うか……。極めて遺憾ながら、自分にとっての最優先事項は、みずほ先生@井上喜久子17歳よりも森野苺さん@田村ゆかり17歳なのですよ。シリーズ中盤では、そんな彼女について衝撃の事実が明かされる。まあ、この方なら精神年齢400歳とか言われても驚きませんが(アナタハシンジラレマスカ?)。そんな苺さんを、けっきょくおざなりにしたままで物語が終わってしまったのが、刹那さん以上に切ない。それとも、彼女には「おね2」で幸せが訪れるのでしょうか?
21:10 Permalink

2008年05月26日(月)

わかつきひかる「ふたかた」(一迅社文庫)感想

■こんなかわいい子がおんなのこのはずが

 わかつきひかる氏の小説を読むのは初めてです。……ですよ? さて今回のお話は、事故でふたごの姉を亡くした少年・桂高志が、ひょんなことから女装をするようになる……という。うーむ。状況自体は乾くるみの「マリオネット症候群」に近いのですが、焦点を変えることで、ここまで違った印象を受けるものなのですね。当事者である少年少女たちの自意識の描写が見どころ。

■全12話アニメのような物足りなさ

 しかし、読後に胸に残るのは、どこか物足りない思い。どうしても、いろいろ突き抜けてしまっている「おと×まほ」と比べてしまうからなのか、あるいは出版社側の規制とかで、直接的表現が抑えられているためなのか……。たとえるなら、魅力的な要素を散りばめておきながら、尺が足りなくて消化不良になってしまった全12話(一クール未満)アニメを観てるようです。それこそアニメ作品なら、DVDで何かが解除されたり未放映話を追加したりもできるのですが。
 とりあえず続編で、この高志くんがだんだん女装の魅力に取り憑かれてく様子でも、じわじわずるずるちくちくと描いていってくれることを期待します。
22:30 Permalink []

2008年05月29日(木)

早矢塚かつや「死神ナッツと絶交デイズ」(MF文庫J)感想

「あと、痴情のもつれで後ろから刺されたりとか、最近物騒だから気を付けてね。メールのひたすらの改行には注意だからね」(小石川衣沙)

■裏スクイズ

 夜の校舎。誰もいないはずの教室。主人公の少年・小石川幌右(ホローさん)がそこで出逢ったのは、「死神」を自称する少女、ウォルナッツ。「しにがみのバラッド。」や「シゴフミ」に続き、そろそろ死神っ娘ジャンルとでもよぶべきものが形成されつつあるのかもしれません。しかし、読み進めていくと、なんだか予想外の展開。主人公をとりまく男女関係とか、よりあからさまには引用した台詞とか、明らかに「School Days」を意識したと思わせる造り、ただし目指すのは幸せな結末! みたいな。あるいは、死神ナッツの「あっは」という口癖から竹本健治を連想したんですが(するのです)、それからいくと「匣の中の失楽」にも通じるものがあるかも。

■とらねこのなく頃に

 どういうことかと申しますと……本作には重要なモチーフとして、ねこが登場します。ということはつまり、SFです。時空転移ものです。主人公たちの間で起こった、ある悲劇的な事件。それを回避するために、彼ら彼女らが奔走する。この過程の描写がなかなかに面白い。そして辿り着いた結末、果たしてこれがハッピーエンドなのかバッドエンドなのかは意見の分かれるところでしょうが(私はどちらかというと後者なのではないかと)。
22:44 Permalink []

2008年05月30日(金)

竹本健治「キララ、またも探偵す。」(文藝春秋)感想

■竹本健治どこへ行く

 シリーズ第二弾。ちゃんと翌年に続編が出るなんて! しかし、これはなんとも……。文章は相変わらずめちゃめちゃ面白いのですが、もはやこれはミステリではないのではないかという気がします。第3話とか、どこがミステリなのか判らないのがミステリィ。これまでとは別のあぷろーちで、アンチミステリの可能性を探っているというのは深読みのしすぎでしょうか。「雨の公園で出会った少女」は、さながら終章に代わる光景。
 というわけで冒頭の自問に対する回答は、どこへも行かないしどこからも来ない、けだしウロボロス。
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「バンブーブレード」(AT-X)感想

■ばんぶれタマ気持ちいい

 いまどき真っ当な青春熱血剣道アニメ、ひとまず終了。中盤からどんどんテンションが上がってきて、といってもDVD買うしかない……!! とまでは行かないのですが、終始とっても気持ちよく、もといタマ気持ちよく観れました。
 惜しい点があるとすれば、AT-Xはもっと早く放映してほしかったというくらいですか。よりにもよって感動の終盤を、すとぱにだっしゅ仮面のメイドガイと同時進行で観なければいけなくなったというのが……。同じ剣道部でもえらい違いです。

■タマちゃんタマかわいい

 まあまあそれはそれとして。やはり最大のポイントは、タマちゃんこと川添珠姫@広橋涼がタマかわいいということ。ふだんのちょっと気の抜けた声と、打って変わっての試合中の気合い声、やっぱり すごい 広橋涼アワー。そして何より、アニメや特撮に夢中になっているときの幸せそうな様子。好きなことを自信を持って語れるタマちゃんのような子はとっても憧れます。
 そんなタマちゃんのみならず、室江高剣道部の面々、さらには他の高校のライバルまで、みんな実に魅力的。そして、出発点はそれぞれだったけれど、お話が進む中で、みんなそれぞれのやり方で、しっかり剣道に向き合うことができた。「剣道って楽しい」ということを第一義に伝える作品だったとすれば、その目標は十全に達成されたといっていいでしょう。

■倉田英之タマカッコいい

 それだけでも部活ものとしてじゅうぶんに及第点ですが、この作品がすぐれているのは、さらにもうひとつの物語が描かれていること。それが、石田先生の物語。彼ら現役の高校生と同じ剣の道を歩んでいながら、序盤では生徒からダメダメだと言われていた先生。そんな石田先生の成長というか変化が、ここではっきり描かれている。
 実際、もはや高校生ではないけれど、ものわかりの悪い大人でもない、こういうキャラクタが一人いることで、自分も含めた大人の視聴者が感情移入しやすくなるのですよね。いわば深夜アニメ的メソッドみたいな……。人生の敵は理不尽だとか、そういう微妙に黒い話もありつつ、せめて竹刀を握っている間は、竹を割ったような調子でいきまっしょい、みたいな(いや、意味判らん)。
 そんなこんなで相変わらず、倉田英之脚本の巧さを感じた作品でした。しかも最後は斎藤千和って、隙がないにも程があります。第二期「バンブーブレードSchneiderS」でまた逢いましょう。
22:14 Permalink

2008年05月31日(土)

「AIR IN SUMMER」(TBSチャンネル)感想

■AIRの夏、セミっぽい夏。

 BS-iではこれだけ再放送がなく、未見のままでしたが、CS・TBSチャンネルで放映してくれたので視聴。っていうか、本編、それもSUMMER編の記憶なんてすっかり薄れてしまっているので、こんなにノリの良い作品だったっけと意外な印象。神奈さま@西村ちなみはもとより、「えいっ」がかわいい裏葉さん@井上喜久子さん17歳にまで萌えられてしまうのだから、京おにいちゃん後生畏るべし。しかして、その後生というのは「AIR」ではなく、「CLANNAD」だったりするかもなのが鍵的世界。現実と夢が地続きの、えいえんのせかいはきっとあるよ。
23:57 Permalink [AIR]