「……初歩的な質問でなんだけど、ウインドウズとマックって、結局何が違うんだ?」
この、本当に初歩的な質問に、玖渚は少しの間、考えて、「使う人が違うんだよ」と、実に的確な答えを返してくれた。
第23回メフィスト賞受賞作にして西尾維新デビュー作、戯言シリーズのここがゼロ地点。ようやく文庫化スタートです。
西尾維新の森博嗣作品との出逢いじゃありませんが(「Φは壊れたね」文庫解説参照)、私自身も、この作品のノベルス版を、いつ、どのような状況で、どこの本屋さんで買ったのかということを、今でも完璧に憶えています。あのとき出逢っていなければ、誇張でなく人生が変わっていたであろう、あの2002年初頭、京都市左京区。おそらく日本中で、同時多発的にそのような状況が起こっていたことでしょうが……。そして、この文庫化で、また多くの西尾維新の良き読者が生まれるであろうことを、願ってやみません。
そんな本作、久しぶりにきちんと読み返してみての感傷というか雑感というか、いってしまえば戯言。あぁ、今とは比べものにならないくらいまともだなぁ、ちゃんとミステリしてるなぁ、という印象(おいおい)。ちゃんと比較したわけじゃありませんが、どうもノベルス初版からほとんど手を加えていない模様。実は密かに「ツンデレ」という単語あたりオプションで追加してるんじゃないかと思ったのですが。それでも、本編開始3ページでメイドさん(しかも三つ子)が出てきたり、そこここにアレなネタを仕込んでいたりするあたり、やはり西尾維新。いや、別にそんなとこで評価してるわけじゃなくて……。
この巻はシリーズ屈指といっていいほどキャラの平均年齢が高いので、必然的に玖渚友に萌えることになるのですが、それもシリーズ通してみれば、文字通り必然というか。この玖渚友と、語り部である「いーちゃん」の立ち位置。青色サヴァンと、天才を「遠い存在」と表現する戯言遣い。その位置関係が、どう移り変わっていくかが、今後のシリーズの見どころの一つであるのです。
そして、もう一つ忘れてはいけない、もとい忘れられないのが「人類最強」哀川さん。ネタばれですが(だからいまさら)、このラスト10ページは、何度読んでも喜んでしまいます。ラストで世界が崩壊するミステリは数あれど、っていうかそういうの大好きですけど、この作品はいわば、ラストで世界がはじまる物語。夢も希望も、赤く塗りつぶす、本作唯一無二のスーパーヒーロー。
それにしても惜しむらくは、せっかくの竹さんの流麗イラストとデザインにモアレが発生していること。X文庫以外にライトノベルレーベルをもたない講談社文庫、この方面の知見が不足していたのでしょうか。西尾維新文庫と銘打つなら、そこも完璧を期してほしかった。青色サヴァンの髪質とまでは言わずとも、もうすこし良い紙質を希望なのです。
とはいえ、この文庫で嬉しいこともあって、それは解説が存在しないこと。物語本編に対する蹂躙とも思える無粋な解説は戯言シリーズには必要ないと判断されたのなら素晴らしいことです。私としては、本編と書き下ろしアトガキと描き下ろしカバーさえあれば、あとは何もいりません。続編も二ヶ月ごとに刊行ということで、楽しみにしてます。ってか、「ザレゴトディクショナル」は文庫化されんのでしょうか……。