2008年03月20日(木)

豊島ミホ「青空チェリー」(新潮文庫)感想

 著者のデビュー作を含む短編集。昨年末に読んだ「日傘のお兄さん」に続き、これまた素晴らしい。いっけん素朴に思える言葉の紡ぎ方が、不思議と性に合って、とても心地良い。キャラが立った小説はたくさんあるけれど、世界そのものが匂い立つくらい圧倒的な現実感を憶える小説に出逢えることは、そう多くはありません。
 個人的に、著者が自分と近い年齢だというのも関係してるのかもしれません。世代論なんて乱暴なものだけど、やはり無視できない要素だと思うのです。西尾維新みたいに表層に現れてはこなくても、こどものころ読んだマンガや、観ていたアニメとかいうものが、どこかで通底する感覚を形成しているみたいな。しかもその範囲は相当シビアで、ちょっと年齢がずれただけでもう感覚が違ったりするもの。まあ、誰とは言いませんが某賞の5回や19回や21回があまりピンと来ないのも、そのせいだったりするかもしないかも。今回の作品集でも、もう少し著者の世代が上だったら受けつけないような素材を扱っていたりするのですが、実際に自分たちの世代の空気というものを見事に捉えているからこそ、素直に読めるところがあるかもしれません。
 とくに最後の「誓いじゃないけど僕は思った」にはやられました。中学時代の同級生の女子のことを忘れられない主人公。ドラマチックでも何でもない、淡々とした日々の思い出。それでも、とてつもない訴求力を持って見えてしまうのは、それがもう二度と戻らない日々だから。ふと、「School Days」の彼ら彼女らが、一歩を踏み出さなかったケースが、こんな感じかもなぁとか思いました。互いに想いを伝えることもなく、遠くから眺めるだけで終わってしまう、それは究極のバッドエンド。

2008年03月20日 23:25 []