幻想小説、だそうで。いわゆる推理小説と幻想小説は、導入部はけっこう似てて、どちらも物語の軸に大きな「謎」が据えられる。それが合理的に解決されるのが推理小説で、そうでないのが幻想小説……と、どこかで聞きかじった憶えがあります。とはいえ、推理小説でもアンチミステリと呼ばれるもの、竹本健治とか麻耶雄嵩とかの一部の著作には、とても合理的に解かれるとは言えない、幻想小説的な雰囲気もあるわけで、両者の境目は曖昧3センチ。むしろ、こういうジャンルの小説だという先入観なしに読めるほうが幸せだという場合もあるかもしれません。本格推理小説だと思って読んでて幻想小説になっても、少なくとも私は怒りませんので。推理小説だと思ったら×××になった「Jの神話」に比べたら(比べるな)。
合理的な解題がなされないからと言って、デタラメにやっていいというものでもなく、むしろ全編にわたって落ち着いた雰囲気が感じられました。人魚とかヴァイオリンとか、映像化したらぴちぴち喧しくなりそうなところですが、これぞ小説の力というものでしょうか。そんな主題を引き立てるように、副題になってる玩具館の店員、奇人店長Tと妹の美珠さんが豊かな旋律を奏でる。軽快な掛け合いが楽しかったです。具体的な年齢の記述がなかったので、美珠さんは推定10歳ということでひとつ(それこそ幻想では?)。