2007年12月12日(水)

米澤穂信「インシテミル」(文藝春秋)感想

米澤穂信_インシテミル

 聞こえる聞こえる、ヴォイスオブワンダーランドが。ミステリに飢える若人たちの嘆きが。だっておばあちゃんに化けたオオカミの耳は長いんだもん。青春ミステリの皮をかぶった、これはとんでもなくコアなミステリです。キケンキケン。
 とある求人広告誌に載った、誤植かと思うような多額の報酬。そうして集められた12人は、閉ざされた館の中で、一週間を過ごすことになる。ある非常識な条件を提示されて……。ミステリが容易に成立し得ない現代に、それを成立させるために組み上げられた、巧緻にして大胆な企て。最初は、阿藤先生とか伊藤先生とかいうたわいないレトリックにつられて笑っていたら、いつのまにか空気がすっかり入れ替わる。とりわけ、ラスト70ページがやたら面白くて、やっぱり自分はこちら側の人間だなぁと思った次第。異常な状況を経験した末に、何の変哲もない日常に戻るオチは西尾維新にも通じるところがあるかも(っていうか、麻耶雄嵩が「痾」で既にやってるんだけど)。お土産に、クローズドサークルに行ってきました饅頭はいかがですか?

2007年12月12日 23:14 []