2007年12月06日(木)

西尾維新「刀語」 第十二話 炎刀・銃 (講談社BOX)感想

西尾維新_刀語_11評価: 10点[前回比: ±0](累計: 112/120 平均 9.3)

 うわぁ……。

 まったく、この西尾維新という作家は……。お約束というものをこの上なく知悉し理解し判っていながら、こういうことを平気でやってくるのですから。戯言シリーズが目も眩むほどのハッピーエンドだったのに対して、こちらは目眩がするほどのネガティブハッピーエンド。そして、こういう終わり方を否定できなくなくもない自分がいることもまた事実。ネタバレになりますが(今さら)、ちぇりおは小説より奇なりと申しまして(どこがネタバレだ!? と思った未読の方はぜひ第一話からお読みください)。あるいはこう言ったほうがいいでしょうか。ちぇりおはツンより出でてデレより強し。ただし三重否定には負ける、みたいなっ。三省堂書店で買えば良かったかなぁ(なんのこっちゃ)。
 先月のお話を読んで、藤崎竜「封神演義」を連想したと書きましたが、あちらでラスボス的扱いを受けた「歴史の道標」のごとき存在は、しかし「刀語」にはついぞ登場しない。地を這う人間には、天上の存在にはけっして手が届かないという、あたかもそれは諦観のように。物語のクライマックスの舞台が天守閣であるのも、それを象徴しているかのよう。天を守るとは名ばかりで、地上から見れば高くとも、摩天楼にすら及ばない。そういう、大きな世界と主人公たちの切り離され方が、いかにも「きみとぼく」というか、戯言シリーズのころからやっぱり変わってないなぁと思ったりします。もちろんいい意味で。成長しない進化する、これぞ維新。こなゆきちゃんもきっとずっとあのままに違いありません(あれ、何の話だっけ……)。
 ともあれ、そんなふうに変わらない歴史、終わらない世界の中でも、相変わらず、あまり悲壮感を感じさせない登場人物たち。壊れているのとは、囲われているのとは、やはり違う。だからきっと、この「物語の終わり」はネガティブであっても、けっしてアンハッピーではない。そんな二重否定で表現せざるを得ないお話だからこそ、否定姫さまがここまで輝いたのでしょう。や、ホント貴女、いろんな意味で最高でした(とがめさんには心からお疲れさまを言いたいことは確かですが)。第六話で書いたとおりのキャストでアニメ化を希望しなくもないです。

2007年12月06日 22:46 [] [西尾維新]