2005年01月27日(木)

「プラネテス」Last Phase そして巡りあう日々(NHK教育)感想

「ユーコピー?」(ユーリ)
「……アイコピー」(タナベ)

 おおおおおおお。素晴らしいとしか言いようがない。放送が終わってすぐさまリピート再生で二回観てしまいました。そして改めて気づかされる伏線の数々。まったく感想なんて書いてる場合じゃありません、今すぐDVDを全巻購入して最初から観直してみたい気分です(気分だけで抑えてますが)。

 ああ、これは感想がどうしても書けません。いつものようにあらすじをなぞりながらとか、各登場人物に的を絞ってとか、いろいろ考えてみたんですけど、どれもとりとめがなくなりそうで(そして実がなさそうで)断念。以下、この最終回自体の構成から考察を加えつつ、本当にシーンを限って具体的な感想、さらにシリーズを通した全体的なまとめを行いたいと思います。

 この最終回の構成は(これまでのシリーズ構成を反映した結果として当然ながら)明確に二つのフェイズに分かれています。ひとつはハチマキとタナベという、ふたりの物語。そして、これまで描かれてきた、彼ら以外の人物の物語。あるものはタナベ、あるいはハチマキを中心とした輪の中で描かれ(九太郎とかリュシーとか)、またあるものは逆に、もっと大きな輪の中心となり、むしろハチマキたちがその輪の周囲をまわっている(ロックスミスとかドルフとか)。ハチマキが最終的に悟ったとおり、まさに人と人との「つながり」。
 そういう意味で、「フォン・ブラウン号に乗って木星へ向かうハチマキ」/「それを見送るタナベ」という構図で、この物語はいったんの終幕を迎えるわけですが、もちろん本当の意味での終わりではない。第1話、テクノーラに入社したタナベの、ハチマキとの出逢いからはじまった物語。それはひとまずの別れで幕を閉じる。でも、スタッフロール後の星野家のシーンで描かれていたとおり、きっとまた逢える。だって終わりははじまり、そしてそれは永遠に続くのだから……。ダ・カーポネタも大概にしろ、と言われそうですが、いやしかし、元ネタ以上に、この作品にぴったりの言葉だなぁと思うわけです。
 そう、彼ら以外の人物たちの物語は、まだ途中だったり、はじまったばかりだったり。それはスタッフロールに乗せて流れる、それぞれの人々の「その後」の描写に端的に現れています。ちなみに、このスタッフロールが終息したあとに先ほど言及した星野家のシーンが描かれる(テーマ曲は流れ続ける)という演出からしても、作品構成の二面性は裏づけられます。いわば二重のEDになっているわけですね。各キャラの「その後」のシーンを仔細に過去回の伏線と照らし合わせていくだけでも、ものすごい分量の解析ができなんですが……。
 しかし。ここで見逃してはならないのは、その中にノノのシーンが含まれてないこと。そして思い起こされるは、今回の中盤の不穏な展開。月面をこっそり遊歩するノノが出逢った、ひとりのテロリストとおぼしき人物。しかもこれ、どうもハキムなのではないかと……(彼の回想シーンは存在しないはずなのにキャストに名前があるところを見ても)。この最終回に来て、まさかそんな展開になるとは……と、アイキャッチのあたちあたりはドキドキものだったのですが、けっきょくこの後の展開は明かされないままでした。最後にして最大の伏線が未回収のままになっているのは、語義上正しく確信犯かと思われます。物語に終わりはない、それはつまり、社会上「悪」とされる存在に対しても、それが一朝一夕に消散するわけではないことも示しています。宇宙に魅入られ、修羅に落ちた人間の存在を、この大団円の中でも忘れさせることのない構成。やはりこの作品のこういった点を、私としては高く評価するところです。

 しかし、それでも世界は一歩ずつ変わりはじめていることでしょう。木星開発の旗手となってテクノーラ社の支配を脱したドルフ。早くも土星開発の計画を進めるロックスミス。歴史のマクロな観点からみて重要な役割を果たすであろう彼らほどでなくても、地上で奮闘するエルタニカ人のテマラ。同じく、刑期を終えた後は祖国の復興のため、書物の翻訳を志すクレア。多くの人々が先へ進もうとしている。全体としてはやはりその流れが強調されているから、後味は非常に良いわけです。
 そしてまた、変わっていく点と、変わらない点、両者が共存しているのが良いところ。それを象徴するのがやはり「デブリ課」。ハチマキとタナベ、クレアがいなくなり、エーデルは正社員となって庶務課勤務と、多少の構成の変動はあれ、フィー、ユーリ、ラビィ(補佐が取れた係長にはなったけれども)は相変わらず。先週フィーがいなくなったと思ったのはクレアの間違いでした。この状況下でもテクノーラに残り、デブリ屋としての仕事を続ける、という選択肢もまた、強固な意志のもとによるものでしょう。それだからこそ、タナベもふたたび、この場所に戻ってきたいと思ったのですから。やはりこのデブリ課もまた、タナベ、そしてハチマキにとっての「帰る場所、港」であるわけですね。
 最後に、ふたたびEVA(船外活動)に出たふたりのシーンでこの感想も締めくくりましょう(これはスタッフロール前の本編ラストでもあるわけですが)。しりとりをしあうふたり。盗み聞きしようとする課長と係長がフィーに止められるシーンも含め、非常にほほえましい。何度も「け」で終わらせるタナベ、明らかに「け」ではじまって「ん」で終わる単語をハチマキに言わせたかったんでしょうね。しかしハチマキの出した言葉は、「け。……結婚しよう」と連文節となることで、タナベにもう一度まわってきてしまう。それに対し「うん」と答えてタナベの負け、という流れが(二回目に見てそのカラクリが理解できたんですが)とっても粋で素晴らしかったです。

 振り返ってみて、最初から最後まで本当に緻密に考えられたシリーズ構成。それに加え、一話一話が独立した話として毎回最高のクオリティを保っていました。今まで、アニメを観て涙を流したことなんて皆無(小説でも数えるほど)だった私が、Phase 10 屑星の空Phase 16 イグニッションPhase 24 愛と、三度も泣かされました。三度ともその感動の意味合いが違うのがポイントです(とくに16話に至っては、ハチマキがフォン・ブラウン号の機体を触るあたりまでで、三度見返して三度とも泣いてしまった)。まあ、これは私も年だということかもしれませんが……。
 もうなにも言うことはありません、百点満点、超殿堂入り……と言いたいところなのですが、しかし、「続編」への期待を込めて、あえて99点の「通常の」殿堂入りとしておきます(Φなる・あぷろーちに続けて超殿堂入りを連発するわけにもいかないという事情もありますが)。いや、これはやはり、続編を作るべきでしょう。大晦日にスペシャル版が放映されたとはいえ、一部のアニメファン以外の知名度が低いままで終わらせるのはもったいない。それこそ映画版が出来るのならば、それが望ましいのですが、TV放映という形でも良いです。その場合は「NHK地上波、ゴールデンタイム枠」を目指してほしいところです。本気で日本が「世界に冠たるアニメ・マンガ文化」を誇ろうとするのなら、それこそがNHKの本道であるべきでは。いや本気で。

2005年01月27日 02:49 [2005年1-3月アニメ感想] [◎ プラネテス]