2004年12月28日(火)

森博嗣「工学部・水柿助教授の逡巡」(幻冬舎)感想

森博嗣_工学部・水柿助教授の逡巡

 最高です。ミステリィ作家・森博嗣の入門書として、これほど不適切な作品は他にないでしょう。幻冬舎文庫「工学部・水柿助教授の日常」[bk1] [amazon]に続くこのシリーズこそ、森先生のもっともコアな部分が抽出されている作品であると思います。
 大学工学部の助教授である水柿小次郎が、ひょんなことから(常套句)ミステリィを執筆することになり、一躍人気作家となるまでの過程を描く(と同時に、話が脇道にそれまくる)シリーズ第二作。ここに至って、ますます「水柿君」と森博嗣本人とを同一視させるような描写が頻出しています。同じ幻冬舎から出ている日記シリーズで触れられていた話題と酷似した記述が大量にあるのもきっと故意でしょう。それこそ作中で言及されている通り、伏線もミスディレクションも大量にばらまいて幻惑させることこそがこの方の作風なので、ここまでくると逆にどこまでが事実でどこからがフィクションが判別できなくなってきますが、素直に乗せられるのがいちばん楽しい。
 とにかく一読して爆笑するのも良いし、さらに深奥に隠された「ミステリィ」そのものに対する洞察に感じ入るのもも良し。京極夏彦「どすこい。」(感想はここ)とちょうど同じく、表面的な読みやすさとは裏腹な、マニア向け作品。
[bk1][bk1.jp] [amazon]

投稿者plateau: 2004年12月28日 23:59 [読んだ本の感想] []