「それはあなたが、私でもなく、純菜でもないからよ。だからあなたはあなたなの」(松浦純菜)
ううむ。相変わらず、付け入る隙のない緻密な本格ミステリ。
改めて、浦賀和宏という作家は、第5回メフィスト賞を受賞してデビューして以来、ずっと変わらないのだなと実感します。それは長所にも短所にもなりうるのですが……。
どの作品にも共通するのは、その登場人物がみな、あまりにも弱く、不安定なこと。たしかに、誰も彼もが「どこか欠けている」。だからこそ、この人の作品には必ずと言っていいほど「死体の切断」が出てくるのでしょう(そして、「浦賀和宏殺人事件」で自己言及された通り、それは大抵「」(ネタばれ伏せ字)ところまで行ってしまうのですが……)。そしてなお、その結末はこの上なく端正な「本格ミステリ」の形式をなぞっているというあたりが不思議というか、抜けられない鎖というか。そのあたりは大森望氏の言う通りです。というか、浦賀和宏の作品を大森望以外が論評してるの見たことないんですが(森先生の推薦は除く)。
それにしても、やっぱりいろいろ地味なのですな。文章が落ち着いてるのは作風だからいいとして、デビューが早かったせいかカバーもいわゆる「ゼロ年代」に比べると地味だし(前二作はけっこう派手でしたけど)。この本にしたって、発売がネコソギラジカルとか鏡家サーガ例外編とかにかぶったということ自体けっこう不幸かも。あと、この作品は違いますが、安藤君シリーズに至っては、全作読まないと話がつながらんという恐るべき仕掛けがあって、シリーズ出せば出すほど(新規読者がつかなくて)売れなくなるんじゃないかと心配になってきます。いや、完璧にいらんお世話ですが(ちなみに安藤君のキャラ造形はけっこう好き)。
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