「ただいまー。あーっ、お雛様だー!」
「ああ、今日は三月三日、ひなまつりか。それにしてもずいぶん立派な雛壇だな」
「そっか、晶哉くんは知らないんだね。うちでは毎年、おかーさんがちゃんとお雛様を飾ってくれるんだよ」
「ふぅん……。でも、よく見るとけっこう年季が入ってるな」
「そう、これは私が子どものころから家にあった雛人形なのよ」
「わ、おばさん」
「…………」
「ーーじゃなくて、お母さん」
「(にっこり)懐かしいわねー。私も子どもの頃は、よくみんなからお人形さんみたいって言われて……」
「嘘っ」
「何か言ったかしらー? 晶哉くん」
「ふがが……ごめんなさいごめんなさい、頬をつねるのやめてください……」
「……(ぽけーっ)」
「いたた……ん? どうした、たおる、ぼーっと雛人形ながめて」
「ーー人形は、どれだけ時間が流れても、年をとらないんだね」
「……たおる?」
「ひょっとしたら、人形さんたちは、逆に人間に憧れてるのかもしれないね」
「お前……」
「えへへー。ねーおかあさん、あたし菱餅たべたいー」
「あらあら、ひなあられもあるわよ」
「じゃあどっちもー。晶哉くんもたべよー」
「あ、ああ、うん……」