2004年02月14日(土)

今日の萌えシチュエーション

 2月13日の夜。
「えーそれでは、第57回乾家家族会議を開きます」
「わーい、パチパチ(拍手)……って、わたしとおかあさんしかいないけど」
「たおるちゃん、判ってると思うけど、明日は女の子にとって大事な一日なのよ。まさに決戦、天王山よ!」
「うん、わかってるよー。もう準備はばっちりだから」
「そう、なら安心ね。でもいい、いくら幼なじみで、今は一緒に住んでる兄妹同然の間柄だからって、油断しちゃダメよ。晶哉くんだってそろそろほかの女の子のことも気になり始める年頃なんだから。クラスの女の子に負けちゃダメよ!」
「はーい。あれ? でも明日って土曜日だったような……」
「しっ! それは言っちゃダメ! この世界では、2月の14日はどんなことがあっても学校は休みじゃないのよ、それが宇宙の法則、世界の基本なの!」
「ふぅん……」

 翌日。
「ガラガラ……あ、おはよう唯ちゃん、いつも早いね」
「あ、ユウキくん、おはよ。ユウキくんこそ」
「ああ……今日はちょっと、ね……」
「…………」
「…………」
「ふたりだけ、だね……」
「う、うん……」
「ね、ユウキくん……」
「えっ? な、なに?」
「あの、さっ。これ、その……」
「え……」
「おっはよー! あ、唯ちゃんにユウキくん、おはよーっ!」
「あっ……お、おはようっ、たおるちゃん」
「あー、うん、おはよう、乾さん」
「? どうしたのふたりとも?」
「う、ううん、なんでも……」

 靴箱にて。
 ひとりの男子生徒の靴箱をそっとのぞきこむ、怪しい女子の姿。メガネの奥がキラリと光る。
「ウフフフフ……今日という日を待ちわびましたわ……。学校中の女子児童が、その胸に秘めた思いをちっぽけな甘い洋菓子に結晶化させ、恋愛というかりそめの感情に身を焦がす。ああ、なんて罪な年中行事! ほらほらご覧あそばせ、あにはからんや、我がクラスの女子児童のあいだうちで隠れた人気を誇る、彼の靴箱にも、こーんなにたくさんの可愛らしい箱に包まれた贈答物が! ホーッホホホホ、なんですかーこれは! 委員長の名にかけて許しませんわーっ! 没収! 没収! すべてボッシュート! 乙女たちの儚き想い、露と消えるがよろしくてよーっ! ……さてと、すべての任務をつつがなく完了いたしましたところで、ここからはわたくしの個人的かつささやかな所用を果たすことに……」
「おい、なにやってんだ委員長?」
「ひっ! あ、晶哉くん!? な、なにか用ですの?」
「用って……そこに立たれてると、オレの靴が入れられないんだけど」
「こ、これは失礼! それでは、ご機嫌麗しゅう〜」
「……なんなんだ、あいつは?」

 ふたたび教室。
 ガラリ。
「……う。な、なんだ? 今、教室に入るとき、ただならぬ殺気のようなものを感じた気がしたが……」
「おはよー、晶哉くーん」
「あ、ああ、たおる、おはよ……」
「どーしたの? 寝不足?」
「いや、別に……お前こそ、今日はやけに早起きだったみたいじゃないか」
「うん。ちょっとね」
「?」
「えへへー。放課後までのお楽しみだよー。お母さんが、狙うのは朝より放課後だって。それが正統派ヒロインなんだって」
「……? なんの話だ?」
「こっちの話ー」

 あっという間に放課後。
「ねえ、ユウキくん、いっしょに帰ろ」
「あ、うん、そうだね、唯ちゃん。と、ところで、朝のことだけど……」
「あ……うん、えっと、外でてからにしよっか」
「そ、そうだね……」
「晶哉くーん。放課後だよー。メインイヴェントの時間だよー」
「なんだそりゃ……」
 教室を出て、帰り道。閑静な住宅街を抜ける通学路の途中、たおるがくるりと振り向いて言う。
「えへへー。なんとおどろき、今日は2月14日なのですー」
「……だから?」
「毎年一回のおやくそくなんだよー。はいーっ、チョコレートなんでーす」
「……ありがと」
「わー、喜んでくれるんだねー、晶哉くん?」
「まあ、そりゃな……」
「でもー、晶哉くんは毎年、ほかの女の子からもいっぱいもらってるしー」
「いや……。今年はなんか、ひとつもなかった」
「えっ? そうなの? それも意外ー」
「なんか、靴箱に、よく判んない果たし状みたいなのは入ってたけど……」
「果たし状? なにそれ」
「いや、毛筆で読みづらかったんだけど、命を落とす勇気があるなら放課後屋上に来いとかなんとか……」
「こわーい」

 そのころ。木枯らし吹きすさぶ学校の屋上。
「…………」

 今日の萌えシチュエーションっていうかだんだんSSみたくなってますが:とことん物語的ステレオタイプなヴァレンタイン・デイ

投稿者plateau: 2004年02月14日 03:12 [今日の萌えシチュエーション]